埋伏歯(まいふくし)とは?
犬猫も人と同じように幼い頃は乳歯が生えており、生後3ヶ月頃から徐々に永久歯へと生え変わります。埋伏歯とは歯が生えてくる時期を過ぎても、歯肉や顎の骨の中に埋もれたまま生えてこない歯のことです。完全に埋もれているものを完全埋伏歯、一部見えているいるものは不完全埋伏歯と言います。小型犬、特に短頭種は顎が小さく、歯が密集しているため、起こりやすいと言われています。
原因は何?
埋伏歯の原因はいくつかありますが、
-
歯の形成不全
-
歯の大きさや形の異常
-
歯の生えてくる向きが異常
などが主な原因として考えられています。
症状はあるの?
埋伏歯の初期は歯の本数が足りないというということ以外に症状もなく、元々永久歯が生えてこない欠歯と区別がつかないため、レントゲンを撮らない限りは気づかずに過ごしてしまうことが多いです。しかし、症状がないからとそのまま放置しておくと、歯並びが悪くなり噛み合わせが悪くなったり、隣の歯の根っこを溶かしたり、歯原性嚢胞という嚢胞(液体が溜まって袋状に膨らむ病態)を形成するなど、新たな問題に繋がってしまうことがあります。
歯原性嚢胞になると徐々に歯肉が風船のように膨らんで腫れてきます。さらに進行すると、嚢胞周囲の歯や顎の骨が溶かされ、破壊されていってしまいます。ここまでくると痛みが生じたり、顔の変形が起こる場合もあり、一度大きく破壊されると、治療しても元に戻らないこともある、とても怖い病気です。
診断方法
診断は一般的な口腔内の検査や、歯科レントゲンにて、埋もれている歯の状態や顎の骨の状況を確認することが必要です。
もともと永久歯が生えてこない欠歯なのか、埋伏歯なのかはレントゲンやCTでないとわからないことが多く、口の中を診てもらうだけでは正確な判断は難しいです。犬猫の場合は、口の中のレントゲン撮影が大変で、レントゲンを撮っている最中に口を開けたままでいてもらうことが難しいため、診断をする際には全身麻酔をかける必要があります。
治療方法
治療のほとんどは抜歯処置です。
埋伏歯が顎の骨から出てきていないような完全埋伏歯では、そのままにしておくと、歯原性嚢胞を引き起こす可能性が高いため、基本的には抜歯により治療します。
犬の場合、完全埋伏歯の44.4%が歯原性嚢胞になっていたという報告や、歯が関連した嚢胞の70%は歯原性嚢胞であったという報告もあります。
しっかり抜歯をして、嚢胞は切除することが重要です。まだ若く、これからまだ生えてくる可能性がある場合は、歯肉を切開または一部切除して、生えてくるのを待つこともあります。大事なのは、早期に発見して、診断と治療を行うことです。
歯の本数が少ないというだけでも、意外と大きな病気につながると知っていただけたかと思います。犬の永久歯の本数は42本、猫の永久歯は30本です。もともとの歯の本数を知っていないと歯が生えてきていないことに気づくのは難しいものです、この機会に覚えておきましょう。獣医師であっても診察での視診で埋伏歯と欠歯を区別すること は困難です。さらに、奥まで詳しく見せてもらえないことも多々あります。診断には麻酔下での歯科用レントゲンが必要になります。
この度、当院にも歯科用レントゲンが導入されました。
わざわざ、レントゲンのために麻酔をかけなくても避妊・去勢手術で麻酔をかける際に本数が少ない子はレントゲンを一緒に撮ることが可能です。若いうちに診断を行い、嚢胞を形成する前に治療してあげましょう。