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大切な命を守るために。院内で心肺蘇生セミナーを開催しました

大切な命を守るために。
大切な命を守るために。

2026年6月23日、アリアスペットクリニック湘南平塚院にて、院内スタッフ向けの心肺蘇生セミナーを開催しました。



今回のテーマは、

「命を救うための“最初の一手”を学ぶ」

です。


動物病院では、日々さまざまな状態のわんちゃん・ねこちゃんが来院されます。

元気がない。呼吸が苦しそう。意識がぼんやりしている。急にぐったりした。処置中や検査中に状態が変化する。



もちろん、そのような急変が起きないように、私たちは日々慎重に診療を行っています。

しかし医療の現場である以上、急な体調変化や心肺停止のリスクを完全にゼロにすることはできません。


だからこそ大切なのは、万が一のときに「誰が、何を、どの順番で、どれくらい正確にできるか」です。



今回のセミナーは、そうした急変時の対応力を高めるために、座学と実践シミュレーションの両方を行う内容で実施しました。




講師は、夜間救急の最前線で活躍されている喜多川麻美先生
講師は、夜間救急の最前線で活躍されている喜多川麻美先生

今回講師としてお越しいただいたのは、TRVA夜間救急動物医療センターで夜間救急診療に従事されている獣医師、喜多川 麻美先生です。



喜多川先生は、夜間救急の現場で数多くの救急症例に対応されてきた先生です。

夜間救急の現場では、呼吸状態の悪化、けいれん、重度の外傷、ショック状態、心肺停止など、緊急性の高い症例に向き合う機会が多くあります。

その最前線で経験を積まれている先生から、実際の現場で何が大切なのか、どのようにチームで動くべきなのかを直接学べたことは、当院スタッフにとって非常に貴重な機会となりました。

TRVA 喜多川 麻美 先生
TRVA 喜多川 麻美 先生

また、喜多川先生はRECOVERインストラクターの資格も取得されています。

RECOVER
RECOVER

RECOVERとは、犬猫の心肺蘇生に関するエビデンスに基づいたガイドラインを整備し、獣医療におけるCPRの標準化と普及を目的とした国際的な取り組みです。RECOVER Initiativeは、獣医救急・集中治療の専門家チームによって始まり、犬猫の心肺蘇生に関するエビデンスベースのガイドラインを作成・更新しています。

RECOVER Initiative
RECOVER Initiative

つまり今回のセミナーは、単なる「勉強会」ではなく、世界的な獣医療の心肺蘇生ガイドラインに基づいた、非常に実践的な院内トレーニングでした。


心肺蘇生は、どれくらいの確率で自己心拍が再開するのか

愛犬・愛猫の心臓が万が一止まってしまったとき、心肺蘇生によってどのくらいの確率で心拍が再開するのか、ご存知でしょうか。

心肺蘇生という言葉を聞くと、「処置をすれば助かる可能性がある」と感じる方も多いかもしれません。


もちろん、心肺蘇生は命をつなぐために非常に重要な処置です。

しかし、一度止まってしまった心臓を再び動かすことは、実際にはとても難しい医療行為です。


犬の心肺蘇生に関する研究では、従来の方法で心肺蘇生を行った場合、自己心拍再開率は18%でした。一方で、RECOVERガイドラインに基づいた方法を臨床現場に取り入れた場合、自己心拍再開率は44%まで改善したと報告されています。


これは、「心肺蘇生をすれば必ず助かる」という意味ではありません。

むしろ逆です。

心肺停止は、それほど厳しい状態です。


だからこそ、自己心拍再開の可能性を少しでも高めるためには、ガイドラインに沿った方法で、できるだけ早く、正確に処置を開始することが重要になります。


心肺蘇生では、胸を押す位置、圧迫の深さ、テンポ、圧迫後にしっかり胸を戻すこと、そしてスタッフ同士の連携が非常に大切です。


また、犬と猫では体格が違います。

同じ犬でも、小型犬、大型犬、胸の深い犬種、胸の幅が広い犬種では、胸部圧迫の考え方が変わることがあります。


つまり、心肺蘇生は「とにかく胸を押せばよい」というものではありません。


目の前の子の体格や状態に合わせて、適切な方法で行う必要があります。

そのためには、獣医師だけでなく、愛玩動物看護師、診療補助スタッフを含めたチーム全体が、心肺蘇生の基本を理解し、いざというときにすぐ動ける状態を作っておくことが大切です。


心肺蘇生は「知識」だけではなく「動けること」が重要

心肺蘇生という言葉を聞くと、胸を押す処置をイメージされる方も多いと思います。

もちろん胸部圧迫はとても重要です。

しかし実際の医療現場では、それだけではありません。


心肺停止をいち早く認識すること。すぐに胸部圧迫を開始すること。人工呼吸や酸素管理を行うこと。モニターを確認すること。薬剤を準備すること。記録を取ること。チーム内で声を出して情報共有すること。時間を区切って役割を交代すること。

こうした一つひとつの動きが、命をつなぐ可能性につながります。


RECOVERの2024年ガイドラインでは、犬猫のCPRにおける胸部圧迫の速度として、1分間に100〜120回が推奨されています。また横向きの状態で胸部圧迫を行う場合、胸の深さの3分の1〜2分の1程度を圧迫することが推奨されています。


このような数字だけを見るとシンプルに感じるかもしれません。

しかし、実際にやってみると簡単ではありません。


100〜120回/分のテンポを保つ。

適切な深さで圧迫する。

圧迫したあとにしっかり胸を戻す。

途中で手が止まらないようにする。

他のスタッフと連携しながら処置を続ける。


頭ではわかっていても、緊急時に正確に行うには、日頃からの訓練が必要です。

今回のセミナーでも、スタッフ一人ひとりが実際に手を動かしながら、胸部圧迫の位置、深さ、リズム、交代のタイミング、チームでの声かけを確認しました。



「知っている」から「できる」へ。

この差は、医療現場ではとても大きな差です。

座学では、心肺蘇生の基本と考え方を学びました。

セミナー座学パートの様子
セミナー座学パートの様子

セミナーの前半では、心肺蘇生の基本的な考え方について学びました。

心肺停止とはどのような状態なのか。犬と猫で胸部圧迫の考え方にどのような違いがあるのか。胸を押す位置や深さはどう判断するのか。どれくらいのテンポで行うべきなのか。なぜ圧迫後にしっかり胸を戻す必要があるのか。なぜ2分ごとのサイクルで動くのか。

こうした内容を、スライドを使って一つずつ確認しました。


特に印象的だったのは、「ただ胸を押す」のではなく、「その子の体格や胸の形に合わせて、圧迫する場所や方法を考える」という点です。


犬と猫では体の大きさも違います。

同じ犬でも、小型犬、大型犬、胸の深い犬種、胸の幅が広い犬種では、胸部圧迫の考え方が変わることがあります。

心肺蘇生は、マニュアル通りに手を動かすだけではなく、目の前の子に合わせて最適な判断をしていく医療行為です。

だからこそ、獣医師だけでなく、愛玩動物看護師、診療補助スタッフ、受付を含めた病院全体で理解を深めておく必要があります。



実践シミュレーションでは、チームで動く重要性を確認しました

後半は、実際の現場を想定した実践シミュレーションを行いました。

急変が起きたとき、現場では一人だけが頑張っても十分な対応はできません。

胸部圧迫をする人。気道や呼吸を確認する人。モニターを確認する人。薬剤や器具を準備する人。時間を管理する人。記録を取る人。全体を見て指示を出す人。

それぞれの役割が連動して、初めてチームとして機能します。

実際の機器を使ってのシミュレーション
実際の機器を使ってのシミュレーション

今回の実習では、スタッフが実際に役割を分担しながら、緊急時の動きを確認しました。

現場で大切なのは、完璧な知識を持っていることだけではありません。

必要なときに声を出せること。次に何をするかを共有できること。迷ったときに確認できること。手が止まらないこと。チーム全体で同じ目的に向かって動けること。

こうした「実際に動く力」は、日頃の練習でしか身につきません。



医療の質は、設備だけではなく、チームの準備で決まる

動物病院の医療体制というと、検査機器や手術設備をイメージされる方も多いと思います。

もちろん、設備はとても大切です。

当院でも、より良い診断・治療につなげるために、医療機器や院内環境の整備を進めています。

しかし、医療の質を支えるのは設備だけではありません。


いざというときに動けるスタッフがいること。チームで連携できること。日頃から学び続けていること。急変時にも慌てず、優先順位を持って対応できること。

これらも、動物病院の医療体制を支える大切な要素です。


大切なわんちゃん・ねこちゃんをお預かりする病院として、私たちは「何かが起きたときにどうするか」まで含めて準備しておく必要があります。

今回の心肺蘇生セミナーは、そのための重要な取り組みの一つです。




飼い主様にとっての安心につながる院内教育を

飼い主様が動物病院を選ぶとき、もちろん診療内容や通いやすさ、説明のわかりやすさも大切です。

それに加えて、私たちは「見えない部分の医療体制」も大切にしたいと考えています。

診察室での説明。検査や処置の裏側。手術や麻酔管理。入院中の観察。急変時の対応。スタッフ同士の連携。院内での勉強会やトレーニング。

これらは、飼い主様からは見えにくい部分です。

しかし、見えにくい部分にこそ、病院としての姿勢が出ると考えています。

今回のような院内セミナーを通じて、スタッフ全体の知識と技術を高めることは、結果として飼い主様の安心につながります。

「この病院なら、いざというときも真剣に向き合ってくれる」

そう感じていただける病院であり続けるために、私たちは学び続けます。



急変を防ぐために、飼い主様にお願いしたいこと

心肺蘇生は、命をつなぐための大切な処置です。

ただし、本当に大切なのは、心肺停止に至る前に異変に気づき、早めに対応することです。

ご自宅で次のような様子が見られる場合は、早めに動物病院へご相談ください。

呼吸が速い、苦しそう。舌や歯ぐきの色が白い、紫っぽい。急にぐったりしている。意識がぼんやりしている。立てない、ふらつく。けいれんが続く。何度も吐いている。お腹が大きく張っている。強い痛みがありそう。熱中症が疑われる。事故や落下のあと元気がない。

このような状態は、緊急性が高い可能性があります。

特に、呼吸の異常、意識の異常、急激なぐったり感は、様子を見るよりも早めの相談が大切です。

もちろん、すべてが命に関わる状態とは限りません。

しかし、飼い主様が「いつもと違う」と感じる直感は、とても大切な情報です。

迷ったときは、自己判断で長く様子を見すぎず、病院へご相談ください。



アリアスペットクリニックグループが大切にしていること

アリアスペットクリニックグループでは、湘南平塚院・西湘秦野院の両院で、地域のわんちゃん・ねこちゃんとご家族を支える動物医療を目指しています。

そのために大切にしているのは、単に病気を治すことだけではありません。

病気を早く見つけること。急変を防ぐこと。必要なときに適切な医療につなげること。飼い主様が不安を抱え込まないようにすること。スタッフが学び続け、成長し続けること。病院全体で、命に向き合う力を高めること。

今回の心肺蘇生セミナーも、その一環です。


一つの行動が、命をつなぐ。

この言葉は、決して大げさではありません。

胸部圧迫を始める一歩。異変に気づく一歩。スタッフに声をかける一歩。病院に相談する一歩。学び続ける一歩。

その一つひとつが、大切な命を守ることにつながります。




最後に

今回、動物夜間救急の最前線で活躍されている喜多川麻美先生を講師にお迎えし、心肺蘇生について座学と実践の両面から学ぶことができました。


喜多川先生、貴重な学びの機会を本当にありがとうございました。

アリアスペットクリニックでは、これからも医療の質を高めるために、院内教育、実践トレーニング、チーム医療の強化に取り組んでまいります。

湘南平塚、秦野、西湘エリアのわんちゃん・ねこちゃんとご家族にとって、安心して相談できる動物病院であり続けるために。

私たちはこれからも、見える部分だけでなく、見えない部分の準備にも真剣に取り組んでいきます。


知っているから、できるへ。その知識が、命をつなぐ。

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