新型コロナウィルス 獣医療分野における公式見解まとめ(3/5更新)



「ペットにもうつるの? ペットからうつされるの? 」といった質問をされることも多く、獣医療に従事する私達にとっても、日々刻々と変わる状況や情報に適切に対応していく必要があると考えています。


中国では動物が感染を広げるという噂が出回り、大切な家族であるはずの犬や猫が処分されるというショッキングな情報も入ってきています。


このような世界情勢の中、AVMA(アメリカ獣医師会)WSAVA(世界小動物獣医学会)、そして東京都獣医師会が、それぞれ、現時点における正式な見解を発表しています。






誤解や誤情報が流れる中で、非常に信頼のおけるソースなので、ぜひここで紹介したいと思います。



わんちゃん️猫ちゃんにおける新型コロナウイルスについて、正しく理解し、正しく対策をしましょう。





【新型コロナウイルスに関する獣医療分野の公式見解まとめ】

※2020年3月1日時点


・犬にも、猫にも、コロナウイルスは感染するが、動物種独特のものであり、種を超えて感染しません。


・すなわち、犬のコロナウイルスは犬でのみ、猫のコロナウイルスは猫でのみ、伝染しあうものです。同様に、2019 n-CoV 新型コロナウイルスは、ヒトの間でのみ伝染します。


・たとえ自分が2019 n-CoVに感染したとしても、自分の2019 n-CoVウイルスを犬や猫に伝染させることはありません。


・ウイルスは、まれに突然変異を起こし、変化します。それゆえ、将来的にはどうなるかはわかりませんが、現時点では、種を超えた感染は2019 n-CoVにはありません。


・新型コロナウイルスが、ヒトからペットに移り、ペットは発症しないがウイルスを所有し、次のヒトに伝染させるという「ペットの媒介」も、今のところは否定されています。


・よって、自分のペットが新型コロナウイルスに外で感染し、家に持ち帰り自分に移すということもありません。


・しかし、猫は外に出さず室内飼いにし、犬も衛生状態を保ち、きれいにして飼うことを推奨します。


・犬のコロナウイルスワクチン(消化器症状)について。「今のヒトの新型コロナウイルスが変異して、もし将来犬にも伝染するようになった時に、消化器コロナウイルスのワクチンを犬に接種しておけば、ひょっとしたら同じコロナなので、免疫が獲得され、肺炎で死亡しないかもしれない」と言って、現在の消化器コロナワクチンをむやみやたらに犬に接種しないように、と獣医師に警告しています。


・2/28付けの香港メディアで、犬から新型コロナウイルスが検出されたとの報道がされましたが、下記の理由から東京都獣医師会では、日本のペットにおける新型コロナウイルスの感染は、現時点において問題とならないと判断されています。

  1. 現時点の漁農自然護理署 (AFCD)の発表では、犬の鼻と口の粘膜にたまたま付着した新型コロナウイルスを検出してしまった可能性があり、犬の体内で本ウイルスが増殖したかどうかは確定していません(犬が感染したことを確認したわけではありません)。

  2. もしペットに新型コロナウイルスが感染するとしても、コウモリなどの野生動物との接触がほぼないとされる日本のペット飼育環境においては、ペットへの新型コロナウイルスの感染があるとすれば、飼主からペットへ感染する経路しか考えられませんが、その可能性も非常に低いと考えられます。


・世界小動物獣医師会(WSAVA)も新型コロナウイルスに関する文章を2月29日付でアップデートし、上記の香港での事例に対するコメントも出ております。すでに東京都獣医師会が配信されている内容とほぼ同じものです。伴侶動物に新型コロナウイルスが感染する証拠はない、という立場は変わりありません。

【原文のリンク】


・香港の事例に対する要点抜粋:

香港の農漁業自然保護局は陽性反応が出た犬の検疫を行っており、さらなる検体を収集して犬が新型コロナウイルスに本当に感染するのか、または何かが混入した結果(陽性反応が出たの)か、確認作業を行う。




【追記】※2020年3月5日現在

香港における犬からの新型コロナウイルス検出に関する追加情報



香港当局は4日、新型コロナウイルスの感染者が飼っていた犬が同ウイルスに感染したことを確認したと発表しました。

これを受けて、3月5日付けで日本臨床獣医学フォーラムから声明が発表されましたので、以下原文を転載致します。



これまでの情報ならびに獣医学の常識から,犬には人間のコロナウイルスは感染しないだろうと考えて情報を発信して参りましたが,どうやらわれわれ獣医界の知らないことが起こったようです.

2月下旬に香港の60歳の女性で新型コロナウイルス感染が確認され,その人が飼育する老齢のポメラニアンの鼻と口の材料に新型コロナウイルス感染の弱い陽性反応がみられました.これがウイルスの付着によるものか,感染なのかを調べるため,その後のウイルスの存在を追跡したところ,複数回の弱陽性反応が出たことから,香港漁農自然護理署(AFCD)は犬が「低レベルの感染」をしていると結論しました.同時にこの所見は大学や国際獣疫事務局(OIE)の専門家たちによっても確認され,「人間から動物への感染例の可能性が高い」とされました.


この犬は新型コロナウイルス感染の症状を全く見せていないといわれていますが,香港政府が先月28日に出した新型コロナウイルスに感染したペットを14日間隔離する措置を受けています.香港では,別の感染患者の犬も1頭隔離されており,現在は陰性となりましたが,隔離は続けられているそうです.香港政府は「現時点でペットがウイルスを媒介するというデータはない」と強調しています.そして,動物が感染源になるといった過剰な心配を抱かないように呼びかけています.以上が朝日新聞デジタルおよびAFPが報じたニュースの抜粋です.犬が感染する可能性は極めて低いといったわれわれの考えは間違っていたことがわかりましたので,ここに正しい情報をお知らせしました.それではわが国の犬においてどのような対応ができるのかを以下にまとめます.



1. 犬における感染 これまでの香港の2頭だけの経験では,感染であっても低レベルであり,犬には症状は出ないようです.しかし,生きたウイルスが少量ながら一定期間そこに存在するということで,注意は必要です.一方,わが国では動物に対して人間のコロナウイルスのPCR検査を行う体制は全く整っていませんので,検査を行うかどうかについては保健所の判断と思われます.動物病院に来院されても国立感染症研究所から出されている感染管理ガイドラインに沿った対応はできません.



2. 人間が感染して家庭に犬がいる場合 犬は家の中で隔離してください.幸いに犬が健康を害することはないようなので,隔離しておけば自然に感染はなくなるものと思われます.症状がなければ動物病院でできることもありません.また,人間のコロナウイルス感染者を受け入れることができるような病院に相当する動物病院の体制は整っていません.感染した人間が軽症で家にいるならご自分で犬の世話をしてください.感染した人間が入院する際には,犬をどうするかについては,医師ならびに保健所の指示を仰いでください.



3. ふつうの家庭犬は外出を避ける

外に出るのも家の周りだけにする,人混みには連れて行かない,他の犬との接触を避けるためドッグランも利用しないことで,自宅にいるのが最も安全と思われます.犬にはコロナウイルスが入ったワクチンもありますが,これは犬の消化器コロナウイルスのワクチンで,人間のコロナウイルスに対しては効きません.



4. 猫はどうする 猫にも感染のリスクはあると考えて,外に出さず,家の中においてください.猫のコロナウイルスには,多くの猫が持っている病原性のほぼない猫腸コロナウイルスと,それが突然変異してごく少数の猫に病原性を示す猫伝染性腹膜炎ウイルスがありますが,これらは人間のコロナウイルスとは異なり,猫ではワクチンはありません.猫に人間のコロナウイルスが感染するかどうかについては,SARSコロナウイルス大量を実験的に気管内に接種して感染が起こることが示されていますが,これはあくまでも自然界では起こりえないような実験的な条件であり,その場合も重大な病気は起こらず,すぐに感染から回復するとされています.したがって犬同様に対応してください.



5. 最後に 今回の事例では,犬は善意の第三者であり,たまたまウイルスをもらってしまったと考えられ,どうして犬に感染が起こったのかについては,老齢の犬であったからなのか,それとも犬はすべてそうなのかはまだ例数が少ないためわかりません.しかし,中国のように多くの感染患者がいる場所でも,犬から病気をもらったというような状況は報告されていません.犬は大切な家族の一員です.決して犬を悪者にしたり,飼育を放棄したりしないよう,そして過剰に恐れることなく,ふつうに対応してください.



文責 日本臨床獣医学フォーラム会長 石田卓夫(獣医師,農学博士,日本獣医病理学専門家協会会員)



また東京獣医師会からもこの件に関して声明が出されました。


以下原文を転載致します。



飼い主の皆様へ

【香港当局による、ペットの犬が新型コロナウイルス感染症に感染したとの報道について】


3月4日付け、香港漁農自然護理局(AFCD)の発表を受けまして、本会としては以下の様に考えていることをお伝えします。


本会では、香港当局が、COVID-19感染者が飼育していた犬が同ウイルスに弱いレベルで感染し、その飼育犬は無症状であると発表したことを把握しています。


AFCDは、その飼育犬にCOVID-19ウイルスに対する陽性反応が出た原因はヒト(飼い主)である可能性が高いと報告しています。


AFCDは、犬の体内でウイルスが増殖するかどうか、増殖した場合犬同士で感染するかどうか、現時点では報告していませんし、確認事例は本症例1例のみにとどまっています。


AFCDは、現時点ではペットがCOVID-19ウイルスを人に感染させる証拠はないと報告しています。


したがって、人々がペットを放棄しないように強調しています。


本会は、その飼育犬が本当に感染したのかどうかも含め、今後の発表および厚生労働省の対応を待ちたいと考えています。



本会としては、引きつづき飼育者が感染しない注意が最も重要と考えています。


飼育者の皆様におかれましては、引きつづき冷静な対応をお願い致します。


本件に関しては新しい情報が届きましたら随時更新します。









ペットは、衛生的な環境と良い栄養状態を保ち、極力室内で飼い、動物を触った後は手を洗うという衛生管理は、何も今に始まった訳ではなく、普段から奨励されていることです。ペットが病気を媒介するとか、コロナの入った混合ワクチンを念のため接種するという非科学的想像理論にはどうか惑わされませんように。


【参考】

【WSAVA】新型コロナウイルスと伴侶動物についてのガイドライン


飼い主の皆さまへ【香港当局による、ペットの犬が新型コロナウイルス感染症に感染したとの報道について】







ここからは、病院で受けることが増えた質問を中心に解説していきます。



【新型コロナウイルスに関するQ&A】


Q.1新型コロナウイルスは、犬や猫に感染しますか?

現時点(2020年3月5日)で、香港にて高齢のポメラニアンにおいて1例の感染症例が報告されました。感染経路やペットがウイルスを媒介するかについては現在調査中とのことで、今後随時発信される情報に注視してください。




Q.2犬や猫にも以前からある「コロナウイルス感染症」があります。それは人に感染しますか?

犬や猫にも固有のコロナウイルス感染症があります。 しかしコロナウイルスは「種特異性」※が高いため、これまで犬猫で報告されている 「コロナウイルス感染症」が、人を含めた他の種の動物に感染したという報告はありません。

犬のコロナウイルス感染症の症状は、主に下痢です。猫のコロナウイルス感染症は、始めの症状は下痢です。コロナウイルスが変異した場合に猫伝染性腹膜炎ウイルスになります。これを発症した猫は、命に関わりますが、人には今のところ感染した報告はありません。


※「種特異性」とは 形態あるいは機能のうえで,ある種は共通にもっているが,他の種には認められない特色。例えば、ヒト、サル類は梅毒に感染するが,他の動物は感染しない特性。




Q.3飼い主が新型コロナウイルスに感染した場合、ペット(犬や猫)にはどのように接すればいいですか?

犬や猫の毛につかないように、新型コロナウイルスに感染した場合は、マスクや手袋をしてペットに接してください。あなたが病院等、隔離された場所に行かなければならない場合には、安心してペットのお世話を頼める人に預けましょう。あなたとペットが室内で一緒に生活していたのであれば、患者であるあなたが暮らしていた部屋にペットを残して、どなたかにお世話に通ってもらう方法は、感染対策上お勧めはできません。ペットを預ける場合、念のために、被毛を洗浄するか、またはペットと接する際にはマスクやグローブをつけてもらい、お世話をした後は、丁寧な手洗いを励行するようにお伝えください。




Q.4飼っているペットが新型コロナウイルスに感染したのではないかと心配です。どうすればいいですか?

ペットが新型コロナウイルスに感染したかどうかを検査する方法は今のところありません。もし、ペットへの感染が心配であるなら、人混みに連れて行かないようにし、できるだけ感染のリスクを減らすよう注意して生活しましょう。新型コロナウイルスに感染していた人とペットが濃厚に接触したことが分かっていて、その後ペットの体調が悪くなった、という場合には、かかりつけの動物病院にまずはお電話でご相談ください。ペットを動物病院に連れていく前には必ず事前に連絡を入れましょう。



Q.5中国やウイルスが見つかったその他の場所からペットフードやオヤツを介して新型コロナウイルス感染症に感染することはありますか?

新型コロナウイルス感染症の主要な感染経路は以下の通りです。


  • 飛沫感染

  • 接触感染

現時点で(2020年3月1日)、食品を介して新型コロナウイルス感染症に感染したとされる事例は報告されていません。


なお、ペットフードやオヤツの一般的な注意点は、以下の通りです。


  • 生あるいは加熱不十分な動物の肉・肉製品の消費は避ける。

  • 生の肉・肉類に触れるときは、手袋をするなど衛生管理に気をつける。



Q.6今、飼い主はどんなことに気をつければいいの?

これまでと同様に、十分に衛生状態を保って、犬や猫と暮らすことです。もし可能であれば、猫ちゃんはこの機会に完全に屋内飼いにすることを推奨します。

また何か不安や心配がある場合は、速やかに獣医師に相談しましょう。

デマなどにとらわれることがないように、科学的に正しい獣医師会のHPなどを見るなど、正しい情報収集につとめてください。





【まとめ】

我々獣医療関係者が心配していることは、ネットでデマが広がり、犬や猫がウイルスを伝播することを恐れた飼い主によって彼らが遺棄されてしまうことです。日々の報道にパニックを起こすことなく、冷静に対処してください。

飼い主様も動物たちも衛生管理をしっかりして、安全に暮らしましょう。



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