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良くなったら薬はやめてもいい?~皮膚科が目指す「再発させない治療」とは~

更新日:7月28日



「痒みがなくなったので、お薬はやめても大丈夫ですか?」



皮膚科診療をしていると、飼い主さんから最も多くいただく質問の一つです。

もちろん、薬を必要以上に続けることは望ましくありません。


しかし、アレルギー性皮膚炎では

「症状が落ち着いた=病気が治った」ではないことが多くあります。




今回は、皮膚科が大切にしている「プロアクティブ療法(Proactive therapy)」という考え方についてご紹介します。


 


痒みがなくなっても、皮膚では炎症が続いていることがあります


犬のアレルギー性皮膚炎では、薬によって痒みが改善しても、皮膚の中では目に見えない炎症(潜在性炎症)が残っていることがあります。


この状態で治療を完全に中止すると、まだ十分に回復していない皮膚バリアに再び刺激やアレルゲンが加わり、数週間から数か月で再発してしまうケースは少なくありません。



そのため皮膚科では、

「症状を抑えること」だけではなく、「再発しにくい皮膚の状態を維持すること」

を治療目標にしています。


フレア(急性増悪)を起こさないことが大切です。



アレルギー性皮膚炎では、症状が落ち着いている時期と、急に痒みや赤みが悪化する時期を繰り返すことがあります。


真っ赤な皮膚/フレア(flare:急性増悪
真っ赤な皮膚/フレア(flare:急性増悪

 


この急激な悪化を「フレア(flare:急性増悪)」と呼びます。


フレアが起こるたびに皮膚バリアはさらに障害され、細菌やマラセチアが増殖しやすい環境となり、外耳炎や膿皮症、マラセチア性皮膚炎などの二次感染を繰り返しやすくなります。



その結果、より強い治療が必要になったり、治療期間が長くなったりすることもあります。


だからこそ皮膚科では、「フレアが起きてから治療する」のではなく、「フレアを起こさせないこと」を大切にしています。


 


〇プロアクティブ療法とは?


プロアクティブ療法とは、皮膚が落ち着いたあとも、治療をすべてやめるのではなく、必要最小限の治療を継続することで再発を予防する治療戦略です。


もともとはヒトのアトピー性皮膚炎で確立された治療概念であり、症状が落ち着いた後も低頻度で外用治療を継続することで、フレアの回数を減らし、再発までの期間を延ばせることが報告されています。


近年では犬のアレルギー性皮膚炎でも、この考え方を取り入れた長期管理の重要性が注目されています。



「悪くなってから治療する(リアクティブ療法)」ではなく、悪くならないようにコントロールする。

それがプロアクティブ療法の考え方です。




プロアクティブ療法にはどのような方法があるのでしょう?


① 外用ステロイド療法


炎症が落ち着いた後でも、以前症状が出ていた部位に週1〜2回程度外用ステロイドを継続することで、再発までの期間を延ばせることが報告されています。


毎日使用し続けるのではなく、「必要最小限の頻度」で維持することがポイントです。




② アポキル®やサイトポイント®による維持療法


アポキルやサイトポイントは痒みを抑えるためのお薬ですが、「症状がなくなったからすぐ中止する」のではなく、その子に合った投与量や投与間隔を見つけながら維持していくこともあります。


症状が安定した後に投与量や投与間隔を調整し、その子にとって最も少ない治療で良好な状態を維持できる方法を探していきます。


 



前回のブログでもご紹介したように、シャンプーは「汚れを落とすため」だけではありません。


皮膚表面のアレルゲンや細菌、マラセチアを減らし、皮膚バリアを整えることで、再発予防にも大きな役割を果たします。


症状が落ち着いている時期でも、適切な頻度でシャンプーを継続することは、立派なプロアクティブ療法の一つです。





「薬を続ける」のではなく、「悪化させない」ことが目的です。

「ずっと薬を使うのは心配です。」


そう感じる飼い主さんも多くいらっしゃいます。私たち皮膚科医も、必要以上に薬を使いたいとは考えていません。


だからこそ大切なのは、「薬を続けること」ではなく、その子にとって必要最小限の治療を見つけることです。


外用薬だけで維持できる子もいれば、シャンプーだけで安定する子、少量の内服薬を続けることで快適に過ごせる子もいます。


治療法は一つではなく、その子の生活環境や症状に合わせて調整していくことが重要です。


 


最後に

アレルギー性皮膚炎は、多くの場合、一生付き合っていく慢性疾患です。


だからこそ皮膚科では、「痒くなったら治療する」のではなく、「痒くならない状態を維持する」ことを目標に診療を行っています。


フレアを一度起こしてから治療するよりも、フレアそのものを予防する方が、結果として使用する薬の量を抑えられ、皮膚へのダメージも少なく済むことがあります。


皮膚科診療のゴールは、薬をゼロにすることではありません。


その子ができるだけ痒みを感じることなく、飼い主さんも安心して日常生活を送れる状態を長く維持すること。


そして、


「必要になったら治療する」のではなく、「悪化させないようにコントロールする」。

それが私たち皮膚科医が目指している治療です。


 


気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。



アリアスペットクリニック

獣医師 酒井




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