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成長期の骨折

~けい骨(すねの骨)の剥離骨折~

けい骨(脛骨:すねの骨)の膝に近い部分が、強い力によって剥がれてしまう病気です。成長期の子犬や子猫で見られる病気で、骨折の痛みによって突然後ろ足を着かなくなるなどの症状が見られます。治療には手術が必要です。

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原因(発症メカニズム)

すねの骨(脛骨)の膝に近い部分は「けい骨粗面」と呼ばれ、けい骨粗面は成長期にはけい骨の本体とは成長板と呼ばれる軟骨でつながっており、骨として完全に一体にはなっていません。この成長板が軟骨から硬い骨に変化するのはワンちゃんで生後6-12か月(大型の犬種ほど遅い傾向)、猫ちゃんで12-18か月ごろです(成長板の閉鎖)。

けい骨粗面には膝蓋靱帯(しつがいじんたい)という膝の曲げ伸ばしに関わる靱帯が付着していて、そのさらに上には大腿四頭筋という大きな筋肉につながっています。このため、運動をする際にはこれらの筋肉、靱帯によってけい骨粗面には上へと引っ張る強い力が加わります。成長板が閉鎖していない若いワンちゃんや猫ちゃんがジャンプをした際などに、この力が過度に加わってしまうことで脛骨粗面が成長板軟骨からはがれてしまいます。ヒトのオスグッド病と同じような病気というとピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。

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左の画像が正常な脛骨、右の画像が脛骨粗面剥離骨折です。

​正常な画像と比較すると脛骨粗面が上方に変位しているのがわかります。

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脛骨の剥離骨折の症状とは?

後ろ足に体重を乗せて立とうとすると、大腿四頭筋に力が入ってけい骨粗面を引っ張る力が加わります。剥離骨折がある場合はこの引っ張る力によって骨折部位に痛みがでるため、骨折している足を着くのを嫌がるようになります。骨折した足を完全に上げたまま3本足で歩いたり、片足をかばいながら歩いたりするような症状のほか、座っているときに骨折した足を曲げずに投げ出すような姿勢をとることもあります。このような症状は、走り回る、ジャンプをするなどの激しい運動をした後や、どこかに足を引っかけてひねってしまうなどのアクシデントの後から突然出ることが多いです。

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好発品種

4-8か月の子犬での発症が多く、犬種による差はないといわれています。また、特にトイプードルなどの小型犬では、成犬でもまれに発症することがあります。

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脛骨の剥離骨折の診断

触診とレントゲン検査で診断します。

触診では脛骨粗面を指で圧迫した際に、痛みで鳴いたり、足を逃がすなどの症状がみられます。

レントゲン検査では脛骨を左右で比べた時に、骨折している方の脛骨粗面が脛骨から離れている様子が観察されます。骨折直後では骨折片の位置があまり変化せずレントゲンで骨折が確認できないことがあるため、数日しても症状が改善しない場合はもう一度レントゲン検査をすることがあります。

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脛骨の剥離骨折の治療法

○保存的治療

骨折したけい骨粗面が、正常な位置からほとんど動いていない場合に適応できることがあります。包帯やギプスを装着して膝関節の動きを制限することで、けい骨粗面を引っ張る力を抑えます。剥離した骨折片が再び固まるまで、包帯をしたまま2-3週間安静に過ごします。大型犬や活動的なワンちゃんでは、包帯の維持や安静を保つことが難しいことがあります。ギプスのみの保存的治療を行う場合は、骨折片の位置が浮いてこないかこまめにレントゲンで確認する必要があります。

○手術

骨折片の位置が大きく動いてしまった場合、自然に治癒することは難しく、手術で治療することになります。皮膚を切開してけい骨粗面を正しい位置に押し戻して固定します。固定する方法は様々ありますが、一般的には金属製のピンとワイヤーを使って固定することが多いです。手術後は包帯を巻いて、骨折部位が安定するまで安静に過ごします。その後、骨が癒合するのを待って(おおよそ2か月以降)、固定していたピンとワイヤーを除去します。

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手術後のレントゲン画像。剥がれてしまった脛骨粗面を押し戻し、金属のピンやワイヤーで固定する。

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骨折部が癒合したらインプラントを除去。粗面が脛骨本体と一体になっている。

脛骨の剥離骨折の予防法

多くの場合は何らかの事故に伴って発生しますので、完全に予防することは難しい病気です。特に活発なワンちゃんや猫ちゃんの場合、お家の生活環境には滑り止めのマットを敷くなどして転倒を防ぐ、むやみに段差の上り下りをさせない、お散歩中は脚にリードが絡まないように注意するなど、事故の予防に努めることが運動器の病気の一番の予防になります。

放っておくと骨の位置が大きくずれてしまい、大掛かりな治療が必要になることがあります。早期に診断して適切な治療を行うことで、大きな後遺症を残すことなく完治させることができる病気です。足の痛みが出た場合は、早めに診察を受けるようにしましょう。

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