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僧帽弁閉鎖不全症
症例
循環器科
僧帽弁閉鎖不全症とは?
名前だけ聞くとあまり耳にする機会も少なく、珍しい病気かな?と思いますよね。
しかし、犬の心臓病の中では最も多い病気なのです。
老齢の小型犬種での発症が多く、犬種では特にキャバリア、チワワ、マルチーズ、シー・ズー、ポメラニアンなどに多いと言われています。10歳以上の小型犬の3割以上、16歳以上の犬の7割以上がこの病気を持っていると言われているほど多い病気です。
犬の心臓は人間の心臓と同様に左心房、左心室、右心房、右心室という4つのお部屋で構成されています。
心臓は、全身に酸素を豊富に含む血液を送り出すためのポンプです。
心臓には、血液の逆流を防ぐ弁が4つあります。これにより血液一方向のみに流れていくようになります。
全身に送られた血液は静脈を通って心臓に戻されます。そして右心房から右心室へ流れ、肺動脈を通って肺で新しい酸素を含んだ血液(動脈血)になります。その後、血液は肺静脈を通って左心房から左心室へ流れ、大動脈を通って全身へと送られます。
左心室から左心房への血液の逆流を防ぐのが、僧帽弁です。
遺伝的な問題や高齢に伴い、僧帽弁が変性することで弁の閉鎖不全という病態が発生します。
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僧帽弁閉鎖不全症の症状とは?
多くの場合、発症初期段階では症状がありません。
病院でワクチンなど予防の際に心雑音が聴取され、偶然発見される機会が多いです。
しかし、病態が進行すると運動する事を嫌がったり(運動不耐性)、ゼーゼーといった喉につかえるような咳をしたり、激しい運動や興奮時に失神するなどの症状がみられることがあります。さらに重症になると、チアノーゼ(舌の色が紫色になる低酸素状態)や肺水腫(肺に液体がたまり、呼吸が苦しくなる状態)などの症状を起こし、死に至る場合もあります。
僧帽弁閉鎖不全症の診断・検査は?
身体検査・聴診
僧帽弁の閉鎖不全で血液の逆流が起こると、聴診にて早い段階で心雑音が聴取されるようになります。動物の胸に聴診器をあてるだけで、病気の有無が判定可能です。
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心臓エコー検査
超音波にて心臓を描出する検査です。心臓の動きはもちろん、血液の流速、弁の状態、逆流血液量の評価、僧帽弁閉鎖不全症の確定診断、細かな病態評価が可能です。この検査にて、適切な薬の処方を行ったり、今後起こり得る病態の変化を把握したりします。
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胸部レントゲン検査
心臓の大きさの評価(心臓拡大の有無)、エコー検査では評価が難しい気管や肺の状態を評価します。
心電図検査
心不全に併発して起こることのある不整脈の検出が可能です。心電図の解析により心臓の拡張度合も評価可能です。
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上記の検査により下記のステージ分類を行います。
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僧帽弁閉鎖不全症の治療は?
ステージによって治療内容は異なります。(ステージは上記の各種検査により判定します)
基本的にステージA、B1は治療を必要としません。
ステージB2から投薬治療を検討するステージとなります。
症状や重症度によって治療に使用するは異なりますが、心臓の負担を減らすために血管拡張薬や強心剤、利尿剤を使用することが治療の主体となります。また、咳の症状に対して気管支拡張薬の投与による治療を行う場合もあります。
僧帽弁閉鎖不全症の予防はできるの?
基本的には予防をすることや完治が難しい病気といわれています。日常生活では、肥満や塩分の高い食事を与えることは心臓に負担をかけるので注意が必要です。早期発見により、投薬などを行って病気自体の進行や症状の発現を遅らせることができるといわれていますので、定期的に聴診などの健康診断を受けることが大切です。ご自宅では、ワンちゃんの運動時の様子や寝ている時の呼吸数が異常に早くないかなどのチェックをこまめに行ないましょう。また、咳や運動をすると疲れやすいなどの症状がみられた場合は、早めに動物病院にご相談ください。