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犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)

症例

内分泌科

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、副腎皮質が正常にホルモンを分泌できなくなる疾患です。これにより、体内で重要な役割を果たすホルモン、特にコルチゾールとアルドステロンが不足します。




◯原因

副腎皮質機能低下症の主な原因は以下の通りです:

1. 特発性

  原因のほとんどは特発性であり、はっきりわかっていません。免疫系が誤って副腎の組織を攻撃し、副腎皮質が破壊されることが原因の一つなのではと考えられています。

2. 副腎の感染症や腫瘍

  副腎に感染や腫瘍ができることも、機能低下を引き起こすことがあります。

3. 遺伝的要因

  特定の犬種、例えばポメラニアンやダルメシアンなどでは、遺伝的に副腎皮質機能低下症を発症しやすいことが知られています。

4. 薬物や治療後の副作用

  ステロイド薬の長期使用が原因となることもあります。




◯症状

副腎皮質機能低下症の症状は、ホルモンの不足により、体のさまざまな機能が正常に働かなくなるため、多岐にわたります。主な症状には以下があります:

- 元気がない、食欲不振

 コルチゾールの不足により、エネルギーが低下し、食欲が減少することがあります。

- 嘔吐、下痢

 消化器系にも影響を及ぼし、特に嘔吐や下痢が見られます。

- 体重減少

 長期的に栄養が十分に摂取できないため、体重が減少することがあります。

- 脱水症状、頻尿

 アルドステロンの不足により、水分と塩分のバランスが崩れ、脱水や頻繁な尿の排泄が見られることがあります。

- 筋力低下

 電解質異常(特にカリウムとナトリウムの不均衡)が筋肉に影響を与えることがあります。

- ショック状態(重篤な場合)

 急性の副腎皮質不全(アジソンクリーぜ)に陥ると、ショック症状(低血圧、昏睡など)が現れることがあります。



◯診断

アジソン病の診断は、獣医による臨床検査と血液検査をもとに行われます。特に以下の検査が重要です:

- ACTH刺激試験

 副腎がホルモンを十分に分泌しているかどうかを確認するために、人工的にACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を投与し、副腎の反応を観察します。

- 血液検査

 電解質のバランス(ナトリウム、カリウムなど)やコルチゾール濃度を測定します。



◯治療法

アジソン病の治療は、主にホルモンの補充療法によって行われます。治療の目標は、欠乏しているホルモンを補うことです。

1. ステロイドの投与

  コルチゾールを補うために、プレドニゾロンやヒドロコルチゾンなどのステロイド薬を投与します。これにより、犬のエネルギーや免疫機能が改善されます。

2. ミネラルコルチコイドの投与

  アルドステロンの不足を補うため、フルドロコルチゾンやデオキシコルチコステロン(DOCP)などが使用されます。これにより、ナトリウムの保持とカリウムの排泄が正常化します。

3. 定期的なフォローアップ

  治療後も定期的に血液検査を行い、ホルモンレベルを監視し、治療の調整が必要です。

4. アジソンクリーぜの管理

  急性の症状(ショックや重度の脱水)に対しては、入院して点滴療法や緊急ステロイド投与を行います。




◯予後

副腎皮質機能低下症は治療可能な疾患ですが、治療は一生続くことが必要です。適切に治療を行えば、多くの犬は通常の生活を送ることができます。ただし、治療を怠ると重篤な症状を引き起こすことがあるため、定期的な獣医師の診察と検査が重要です。

アジソン病は早期発見と適切な治療が鍵となる疾患です。疑わしい症状が見られる場合は、早期に獣医師に相談することをお勧めします。



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