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てんかん

症例

神経科

てんかんとは?

「てんかん」はいろいろな原因により、脳の神経が異常に興奮し、けいれんを主とする「発作」を起こす病気です。急にてんかん発作が出てしまった時には慌ててしまわれる方も多いでしょう。てんかんが重症化すると脳にダメージを与えて命にかかわることもありますが、適切に治療することでコントロールできることも多い病気です。そんなてんかんについて解説します。



てんかんの原因とは?

てんかんは大きく分けると特発性てんかんと症候性てんかんに分けることができます。


○特発性てんかん

神経学的検査、血液検査、MRI検査など各種検査を行なっても特に原因が見つからないが、てんかん発作を起こしてしまう病気です。

○症候性てんかん

頭部外傷や低血糖、脳疾患、腎臓病、肝臓病などの原因となる症状や病気が存在し、二次的にてんかん発作を引き起こしてしまいます。

特発性てんかんは、犬のてんかん発作の原因として最も多く見られます。猫では特発性てんかんは犬に比べると少ないと考えられています。特発性てんかんが初めて発症する年齢は6ヶ月~5歳で、多くは2〜3歳までに発症します。6ヶ月齢以前に発症する場合は脳の先天的な病気などが疑われ、5歳以降で初めて発症する場合では脳腫瘍などほかの病気が原因の症候性てんかんの可能性が高くなります。

症候性てんかんでは病気の原因により治療方法が異なるので、ここでは主に特発性てんかんについてお話しいたします。



てんかんの症状とは?

てんかんの症状は大きく分けて2つ存在します。


○部分発作(焦点発作)

脳の一部分だけが異常な興奮状態になることで体の一部分にだけ発作の症状が起こります。顔面のけいれんや肢だけなど体の一部分だけがけいれんするほか、突然大量の涎を流す、尾追い行動などの症状がみられることもあります。

○全般発作

突然前足と後ろ足がピーンと伸びて、横転したり後ろへのけぞったりする症状(強直発作)が起きたり、手足の屈伸運動や犬かきをして泳ぐような運動(間代発作)が起こることもあります。また、これらの症状が同時に起こる(強直間代発作)こともよくみられます。


てんかん発作は通常、自然に治まる事が多く、その時間は数十秒〜2、3分程度であることがほとんどです。しかし、24時間以内に2回以上のてんかん発作(群発発作)を起こす場合や1回の発作で30分以上のけいれん発作(てんかん重積状態)を起こす場合には、重篤な症状であるためすぐに治療を開始することを検討する必要があります。



もしお家でてんかん発作が起こったら


①まずは落ち着きましょう

突然起こったてんかん発作を目の前にすると驚いてしまうかもしれません。けいれんや、甲高い声をあげる様子からとても苦しい思いをしているように感じるかもしれませんが、発作中は意識がありませんので苦しくはありません。ですから必要以上に慌てないようにしましょう。冷静に起こっている症状や発作時間を見ていただく事で診察時に治療の提案の幅が広がります。また、可能であればスマホなどで動画が撮影できると良いです。


②安全の確保

階段から落ちたりしないか、ぶつかって上から物が落ちてきたりしないか周囲に気を配りましょう。舌を咬まないようにと、口にタオルなどを咬ませようと考えるかもしれません。しかし無意識に手を咬まれる可能性が高く危険ですので、発作が起こっている最中は口の周りは触らないようにしましょう。


③発作している時間を計る

発作の時間を計ってください。5分以上の発作は脳にダメージが残るといわれていますので、投薬を開始するかの相談のポイントになります。



④病院を受診する

発作が5分以上続くようであれば急いで病院に連絡をして受診しましょう。脳にダメージをできるだけ残さないように、注射薬等ですぐに発作を止める必要があります。

また、発作が短時間で治まった場合でも、原因を調べたり、治療の必要性を相談したりするために病院を受診するとよいでしょう。



てんかんの診断・検査は?

てんかん発作がおこった場合、当院ではまず原因となる病気がないか確認するために、血液検査、神経学的検査、画像検査等を行います。これらの検査で原因が見つからない場合には特発性てんかんを疑いますが、より正確な診断をするにはMRI検査や脳波検査などの特殊な検査を行う必要があります。M R I設備は当院にはありませんので大学病院などの二次診療施設へご紹介となります。

各種検査を行い異常が発見されなかった場合に、特発性てんかんと診断されます。



てんかんの治療は?

特発性てんかんの場合は、抗てんかん薬による薬物治療を行ないます。効果がない場合は薬の種類を変更するか、数種類の薬を併用して発作をなるべく抑えられるようコントロールしていきます。第一選択薬と呼ばれる、通常最初に処方される抗てんかん薬で発作がコントロールできるのは、全体の約70%程度とされています。完治する病気ではなく発作の頻度を限りなく少なくすることを目的とする治療であると認識することがとても大事です。薬の効果には個体差がありますので薬の種類や用法は、診察時に一緒に相談していきましょう。

また、最近ではてんかんに対する療法食も作られています。お薬での治療に加えて療法食を与えることで、より発作の頻度を下げられる可能性があります

症候性てんかんの場合は、てんかんを起こしている原因(脳疾患、腎臓病、肝臓病など)の治療を行いつつ、必要に応じて抗てんかん薬を使用しながらてんかん発作を起こさないようにします。原因によっては治療困難なこともあります。

てんかん発作を起こすワンちゃんや猫ちゃんは特定の刺激に対して反応して発作を引き起こすことがあります。(金属音などの甲高い音、フラッシュなどの強い光。)発作を起こした際にきっかけになっていそうな出来事があれば、その出来事を生活の中でできる限り起こさないように気を付けるとよいでしょう。



特発性てんかんは一緒に過ごす飼い主様からするとかなりこわい病気と感じてしまうでしょうし、発作を見ることはかなりショックだと思います。しかし、正しい知識を持って付き合っていく事ができれば、大半の子はうまくコントロールする事ができ寿命まで生きることができる病気です。

何か気になることや症状があるようでしたら当院までお気軽にご相談いただければ幸いです。



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