
麦粒腫と霰粒腫
症例
眼科
◯麦粒腫(ばくりゅうしゅ)とは?
いわゆる『ものもらい』です。瞼の毛包や腺(マイボーム腺など)に化膿性細菌感染による炎症を引き起こし、周囲組織の腫脹と疼痛を認めます。感染細菌はブドウ球菌属が多く、そのほかの皮膚常在菌も原因となります。

主な症状
眼周囲の紅斑
眼瞼縁の腫脹
掻痒、疼痛(眼瞼痙攣や流涙)
結膜浮腫、結膜充血
などの症状の組み合わせで出現しますが、症状の程度はさまざまです。
治療
1.抗菌薬による治療
全身への抗菌薬投与に加えて抗菌薬点眼(軟膏)を使用します。
抗菌薬に加え、浮腫や疼痛抑制のためにNSAIDsの内服薬を使用す ることもあります。
2.膨張部位の切開と排膿処置
炎症が軽減し、膿瘍が確認できた場合針などを用いて切開を行い、溜まっている膿を外に出す処置を行います。わんちゃんの性格によっては点眼麻酔のみで行えますが、必要に応じて鎮静をかけることもあります。
3.温罨法(おんあんぽう)の実施
38度前後に温めたタオルなどを眼瞼に当て、患部を温める方法です。
患部を温めることで血流改善と膿の排出を促します。また、マイボーム腺(脂腺)が詰まることでも炎症が悪化してしまうため、温めることで脂肪を溶かし、腺の通りをよくする目的もあります。
1日2−3回、1回5−10 分程度行うことが推奨されています。
◯霰粒腫(さんりゅうしゅ)とは?
霰粒腫はマイボーム腺の詰まりによる『脂肪のかたまり』です。
瞼の中にあるマイボーム腺という油を分泌する分泌線が詰まってしまい、慢性の炎症を起こし、瞼に硬いしこりを認めます。
細菌感染とは関係ないため、痛みが少なく無治療で自然と消えることもあります。

主な症状
瞼の腫れ
目を気にする(痛みは伴わない)
治療
・小さい場合は自然消滅することも。
・大きくなってしまったり腫れが引かない場合は切開し、排膿処置を行います。
・結膜切開後は抗菌薬や抗炎症薬を使用することもあります。
・麦粒腫同様に温罨法も効果的です。温めることで固まった脂が柔らかくなり、腺の通りをよくすることで腫れの改善につながります。
予後
基本的には予後は良好ですが、腫瘤消失後に同部位または別の領域に同様の貯留が起こる可能性があります。