
恥骨結合癒合術
症例
整形外科
股関節形成不全の進行を防ぐ「若齢期恥骨結合癒合術(JPS)」という手術があります。
これは、股関節形成不全(ヒップ・ディスプラジア)という疾患の予防や進行の抑制を目的に、生後数か月の若い時期に実施される手術です。
股関節形成不全とは?
股関節形成不全とは、太ももの骨(大腿骨頭)が骨盤のくぼみ(寛骨臼)にしっかり収まらず、不安定な関節が形成されてしまう病気です。

進行すると関節炎や痛み、歩き方の異常(跛行)、運動の拒否などを引き起こします。特に**大型犬種(ラブラドール、ゴールデンレトリーバー、ジャーマンシェパードなど)**に多く見られます。

JPS手術とは?
「若齢期恥骨結合癒合術(JPS)」とは、生後12〜20週齢の子犬を対象に、骨盤の前方にある「恥骨結合部」という成長軟骨に熱処理を加えて早期に癒合させ、骨盤の形を正常な方向に成長誘導する手術です。これにより、股関節の受け皿(寛骨臼)がよりしっかりと大腿骨頭を包み込むように成長し、将来的な形成不全や関節炎のリスクが軽減される可能性があります。



メリットとデメリット
メリット:
股関節形成不全の進行を抑えられる
将来的な痛みや手術(人工関節など)を回避できる可 能性がある
成長期に低侵襲で行える予防手術
デメリット・注意点:
適応できるのは生後12〜20週齢の限られた時期のみ
全身麻酔を伴う外科手術である
予防効果に個体差がある
事前にX線検査や整形外科医の評価が必要
対象になる犬は?
大型犬種・中型犬種で遺伝的に股関節形成不全のリスクが高い犬
ブリーダーや獣医師からリスクの指摘を受けた場合
早期(生後2〜3か月)のX線検査で股関節の緩みが確認された場合
最後に
股関節形成不全は、見た目には分かりづらい「成長のゆがみ」が原因で起こります。
でも、そのリスクがあるなら、将来の痛みを「予防」できるかもしれないというのは、大きな希望でもあります。
若いうちにしかできない治療だからこそ、早めの診断が必要です。ご相談下さい。