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バベシア症

症例

血液科

バベシア症(Babesiosis)は、バベシア属(Babesia)という赤血球に寄生する原虫によって引き起こされる感染症です。主にマダニによる吸血を介して感染し、貧血や発熱、元気消失などの症状を示します。重症化すると命に関わることもあるため、早期の診断と適切な治療が非常に重要です。



原因と感染経路


バベシア原虫は、感染したマダニ(主にフタトゲチマダニやクリイロコイタマダニ)が吸血することで犬の体内に原虫が侵入し、赤血球に寄生して増殖します。日本国内ではBabesia gibsoniが多くみられますが、稀にBabesia canisなど他の種も確認されています。また、闘犬や咬傷による血液感染も報告されています。





地域によるリスクの違い


バベシア症は日本全国どこでも発生する可能性がありますが、地域によって感染リスクに差があります。

  • 西日本(九州・四国・関西地方)

  • 温暖な気候と野外活動の多さにより、マダニの活動が活発で、感染リスクが比較的高い地域とされています。特にBabesia gibsoniによる症例が多く報告されています。

  • 関東地方・中部地方

  • マダニの生息域は広がっており、里山や河川敷など、緑地の多い場所はもちろん、都市部でも注意が必要です。西日本よりはリスクは低めです。

  • 北海道・東北地方

  • 冬季の気温が低く、マダニの活動期間は限定的ですが、夏場には注意が必要です。リスクは低めです。

また、バベシア症に感染リスクの高い地域への旅行歴、過去の居住地や移動歴も診断時の重要な情報となります。





主な症状


感染の程度や個体の免疫状態によって症状は異なりますが、以下のような兆候がみられます:

  • 元気消失、食欲不振

  • 発熱

  • 貧血(歯茎や舌が白くなる)

  • 黄疸(皮膚や粘膜が黄色くなる)

  • 溶血による赤褐色尿(血色素尿)

  • 脾臓の腫大

重症化すると命に関わることもあり、早期の診断と治療が非常に重要です。




診断方法


血液塗抹標本の顕微鏡検査で赤血球内の原虫を確認することができますが、検出が難しい場合もあります。最近ではPCR検査や抗体検査によって、より正確な診断が可能となっています。


治療


バベシア症の治療には、原虫を駆除する抗原虫薬(例:アチバロンなど)の投与が行われます。また、重度の貧血が見られる場合には輸血が必要になることもあります。治療後も再発することがあるため、経過観察が大切です。



予防


最も効果的な予防法は、マダニの寄生を防ぐことです。マダニ駆除薬の定期的な使用や、散歩後の体のチェックを心がけましょう。また、咬傷による感染リスクが高い状況(闘犬など)を避けることも大切です。


飼い主様へ


バベシア症は、比較的身近に存在するマダニが原因となる疾患ですが、日々の予防と早期発見によってリスクを大きく下げることができます。


普段の生活で「なんとなく元気がない」「おしっこの色が濃い」といった小さな変化に気づいた際は、どうか無理に様子を見ず、早めにご相談ください。


大切なご家族であるわんちゃんの健康を守るために、当院でもマダニ予防・定期検診などを通じてサポートしてまいります。お気軽にご相談ください。

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