
犬のクッシング症候群
症例
内分泌科
クッシング症候群ってなに?
クッシング症候群とは、「副腎」という臓器から出るホルモン(コルチゾール)が必要以上にたくさん出てしまう病気です。
コルチゾールはストレスへの抵抗力や代謝の調整など、体にとって大切な役割を担っているのですが、過剰分泌が持続すると代謝異常や異化亢進、異感染性などの状態に陥ります。
よく見られる症状
飼い主さんが「なんか変だな?」と感じることが、実はとても大切なヒントになります。
以下のような症状が見られたら要注意です。
水をがぶがぶ飲むようになった(多飲)
おしっこの量・回数が増えた(多尿)
食欲が異常にある(食欲増進)
お腹がポッコリしてきた(腹囲膨満)
毛が抜ける・毛が薄くなってきた(脱毛)
皮膚が薄く、黒っぽくなってきた(色素沈着)
散歩に行きたがらない・なんとなく元気がない
息が荒くなる(パンティング)

これらの症状は、ゆっくり進行するため「歳のせいかな…」と見過ごされがちです。
でも実際は、「ホルモンバランスの崩れ」による病気が隠れていることがあるのです。
どうしてこの病気になるの?
原因は主に2つあります。
下垂体性クッシング症候群(最も多い)
脳にある「下垂体」という部分に腫瘍形成や過形成が生じて、副腎への刺激が増えてコルチゾールを出しすぎてしまう。
機能副腎皮質腫瘍
副腎そのものが腺腫や腺癌になり、コルチゾールをたくさん作ってしまう。稀に、過形成も見られる。
診断はどうやってするの?
クッシング症候群は、いくつかの検査を組み合わせて診断していきます。
特に使われる検査には:
ACTH刺激試験(ホルモンを刺激して反応を見る)
低用量デキサメタゾン抑制試験(ホルモンの抑制の効き具合を見る)
超音波検査で副腎の大きさを確認
必要に応じてCT検査
また、普段の健康診断や血液検査でも、クッシング症候群の「ヒント」になる変化が見つかることがあります。
治療について
治療の選択肢は臨床状況によって異なります。
主に以下の3つがあります:
・内服薬による治療(内科的治療)
副腎からのホルモン分泌を抑える薬(トリロスタンなど)を使います。
定期的に血液検査(ACTH刺激試験)を行うことで、治療の効果確認や治療薬の投与量の調整を行っていきます。
・ 手術による治療(外科的治療)
副腎に腫瘍がある場合などは、手術を検討することもあります。
ただ、副腎の摘出は難しく、内科的な治療が行われることが多いです。
・放射線治療
脳の下垂体腫瘍において、大きさの縮小目的とした方法です。