歯の破折
症例
歯科
破折とは
外傷性に歯のエナメル質、象牙質、セメント質などが損傷(折れる、割れる等)することを「歯の破折」と言います。
破折は、神経や血管など歯髄の露出(露髄)を伴っていない「単純性破折」と露髄を伴っている「複雑性破折」に大きく分類され、さらに破折の部位と程度によってさらに細かく分類されています。
原因
イヌとネコの歯の破折は事故やケンカなどの他、一番多いのは硬い物を噛んだことによるもので、イヌの場合は90%以上がこれだとも言われています。代表的なものとしては石や骨、木などの他、ひづめやアキレス腱、鹿の角などです。噛む為にと売られているものでも折れる可能性があります。イヌとネコの奥歯はすり潰すようには出来ておらず、ハサミのように噛み切るような形状になっているので、噛んで良いものとダメなものの判断基準はハサミで切れるかどうかと言われています。
症状
複雑性破折では露髄しているため、折れて間もない時には痛みを伴い、気にしている様子から気づくこともありますが、破折の大半は気づかずに過ごしてしまうことが多いです。露髄した破折歯は歯髄への感染から歯髄炎を起こして、最終的には歯髄が壊死してしまう「歯髄壊死」と歯根の周囲に膿がたまる「根尖周囲病変」を引き起こします。その結果、内歯瘻や外歯瘻と言われる、皮膚や口腔粘膜の一部から膿が出てくるという症状につながります。
折れた歯は治る?
折れた歯は自然には治りません。乳歯であれば、永久歯に生え変わることで問題なく過ごしていけることもありますが、永久歯であれば、治療が必要になります。また乳歯であっても、感染を起こした場合は治療が必要になることもあります。治療は破折の程度と根尖周囲の状態により決まります。
まずは口腔内検査にて、露髄の有無や破折線の確認、歯の動揺がないかなどを確認します。その上で歯科用レントゲンにより、歯根にも破折がないか、歯根周囲の骨の様子や膿がたまっていそうかなどをチェックしていきます。
単純性歯冠破折
(破折が歯根に及んでおらず、露髄もない、エナメル質と象牙質の一部が折れた破折)
折れた面を綺麗に削り、コンポジットレジンなどを用いて、保存修復する治療が可能です。
複雑性歯冠破折
(破折が歯根に及んでおらず、露随している破折)
神経や血管を抜いて詰め物をする抜髄根管治療か抜歯が適応になります。抜髄根管治療は行える獣医師が限られており、歯科専門の病院等で治療する必要があります。
当院でも単純性歯冠破折のコンポジットレジンを用いた保存修復治療までは可能になりました。歯が欠けた場合はまず、当院で治療可能かご相談下さい。
破折状態
削り直後
レジン修復後
歯は一度失うと元には戻りません。
ヒト同様に大切にしていかなければならないものです。破折は硬いものを噛ませないことで大半を防ぐことが出来ますので、歯を守るために気をつけていきましょう。