
猫の漏斗胸
症例
軟部外科
漏斗胸とは?
漏斗胸とは、胸の中央(胸骨)が内側にへこんでしまう先天性の奇形です。
生まれた時から胸の形が通常と異なっていて、軽い場合は見た目以外に問題ないこともありますが、
重度の場合は心臓や肺が圧迫されて、呼吸や循環に障害を起こすことがあります。
猫ちゃんでは、特に子猫の時期に発見されることが多い病気です。
漏斗胸の症状
漏斗胸の程度によって、症状には差があります。
主な症状は次のようなものです。
胸の中央部がへこんでいる
呼吸が早い、または苦しそうにする
運動するとすぐに疲れてしまう
体重がなかなか増えない
ぐったりする
咳をすることがある
重症の場合、心臓や肺が正常に働けないため、命にかかわることもあります。
漏斗胸の原因
漏斗胸は、遺伝的な要素が関わっていると考えられています。
また、骨格形成の異常や胸壁を支える筋肉の発育不良が原因となることもあります。
現時点では、はっきりとした発症メカニズムは完全には解明されていません。
漏斗胸の診断
漏斗胸は、以下のような方法で診断します。
• 身体検査:胸のへこみを視診・触診します
• レントゲン検査:胸骨の変形の程度や、心臓・肺への影響を確認します
• 超音波検査(心エコー):心臓の圧迫具合や機能をチェックします
必要に応じて、CT検査などさらに詳しい検査を行うこともあります。

漏斗胸の治療法
治療法は、漏斗胸の重症度によって異なります。
軽度の場合
定期的な経過観察(成長とともに自然に改善するケースもあります)
呼吸や心臓の機能に問題がなければ、特別な治療を行わないこともあります
中等度~重度の場合
外科手術を検討することがあります
手術方法には
胸に装具(カスタムメイドのプレート)を取り付けて胸の形を矯正する方法
胸骨を引き上げるための金属バーを設置する方法(手術の写真参照)
漏斗胸の予後(治療後の見通し)
軽度~中等度の漏斗胸であれば、日常生活に大きな支障なく過ごせるケースも多いです。重度の漏斗胸では、早期に適切な治療を行わないと、心肺への負担から命にかかわるリスクが高まります。手術によって形を矯正できた場合、呼吸や運動能力が改善し、生活の質(QOL)も大きく向上することが期待できます。

まとめ
漏斗胸は見た目だけでなく、猫ちゃんの呼吸 や心臓に負担をかける可能性がある病気です。
軽度なら大きな問題にならない場合もありますが、
「胸がへこんでいるかな?」と気になったら、まずは当院にてご相談ください。