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犬の特発性前庭疾患

症例

神経科

犬の特発性前庭疾患について

ある日突然、愛犬がふらついたり、頭が傾いたり、目がぐるぐると動いている…

そんな症状が見られると、多くの飼い主さまは驚き、不安になることと思います。

このような症状を引き起こす原因のひとつに、「特発性前庭疾患」があります。



特発性前庭疾患とは?

「前庭(ぜんてい)」とは、身体のバランスや姿勢を保つための重要な器官で、内耳や脳の一部に存在しています。特発性前庭疾患は、はっきりとした原因がわからないまま突然発症する、一過性の前庭機能の異常です。

特に中高齢の犬に多くみられ、「老年性前庭障害」や「前庭疾患」などと呼ばれることもあります。


主な症状

  • 突然のふらつき(まっすぐ歩けない、転ぶ)

  • 頭を傾ける(斜頸)

  • 眼球が左右または上下に細かく動く(眼振)

  • ぐるぐる回るように歩く(旋回)

  • 食欲の低下、吐き気、嘔吐(乗り物酔いのような感覚)

これらの症状は突然現れるため、脳の病気や中毒などとの区別が重要です。


頭を傾ける(斜頸)
頭を傾ける(斜頸)

突然のふらつき(まっすぐ歩けない、転ぶ)
突然のふらつき(まっすぐ歩けない、転ぶ)



原因と診断

「特発性(idiopathic)」という言葉が示すように、明確な原因が特定できないケースにこの名前が使われます。

ただし、前庭疾患には腫瘍、炎症、外耳炎の悪化、脳の病気など重大な疾患が隠れている場合もあるため、まずは身体検査・神経学的検査・血液検査・画像診断(X線、CT、MRIなど)を行い、それらの疾患を除外していくことが重要です。

特に高齢の犬では、脳腫瘍との鑑別が重要になります。



治療と経過

特発性前庭疾患と診断された場合、多くの犬は数日~2週間程度で自然に回復していきます。治療は主に対症療法(吐き気止め、点滴など)が中心で、ふらつきが強い場合は転倒によるケガに注意しながら、安静に過ごせる環境を整えてあげることが大切です。

ただし、頭の傾き(斜頸)だけは長期間残ることがありますが、本人は慣れて元気に過ごせるようになるケースがほとんどです。



飼い主さまへ

発症の瞬間は非常にショッキングで、「脳卒中では?」「命に関わるのでは?」と心配になるかもしれません。しかし、特発性前庭疾患は多くの場合、命に関わる病気ではなく、時間と共に回復するケースが多いため、まずは落ち着いてご相談ください。

わんちゃんの様子や年齢、既往歴をふまえて、適切な検査と診断をご提案させていただきます。

もし突然の症状に驚かれた際は、動画を撮って来院されると診断の助けになります。

愛犬が安心して回復できるよう、当院でも全力でサポートいたします。

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