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重症筋無力症
症例
神経科
重症筋無力症は、神経と筋肉の接合部(神経筋接合部)に異常が起こる自己免疫性疾患です。
【病態】
・自己免疫性(後天性)重症筋無力症が犬ではほとんど(先天性はまれ)。
・抗体がアセチルコリン受容体(AChR)を攻撃し、神経からの信号が筋肉に伝わりにくくなる。
・結果として筋肉が動かしづらく、疲労しやすくなる。
・若齢(1〜4歳)または高齢(9〜13歳)で発症。
・胸腺腫が併発している場合もある。
【診断】
主な症状
・運動後の筋力低下(すぐ疲れる)
・四肢のふらつき、起立困難
・嚥下困難(誤嚥やよだれ)、食後の嘔吐(巨大食道)
・誤嚥性肺炎を併発して初めて発見されることもある

検査
・血液検査(AChR抗体検査):AChR抗体価を高値を確認。
・テンシロンテスト:試験薬を投与し、症状が一時的に改善すれば陽性。
・画像検査(X線・CT)
食道拡張=巨大食道症の評価。
胸腺腫のチェック(稀に関連)。
・筋電図:神経筋接合部の異常を評価。実施可能な施設が限られる。
【治療】
・抗コリンエステラーゼ薬:筋力改善。投与量や頻度の調整が重要。
・ 免疫抑制療法:重症の場合はプレドニゾロンなどのステロイド使用。
・併発疾患の治療
巨大食道症 → 誤嚥予防が重要。食後の直立保持。
【まとめ】
適切な治療と管理で多くは改善・寛解可能な病気です。ただし、誤嚥性肺炎による重症化の危険性があるため、適切で長期的な管理が必要になります。少数ですが治療反応が乏しい場合もあり、誤嚥性肺炎を繰り返し、改善が難しい場合もあります。
疲れやすさやふらつき、咳や吐き戻しが増えてきたなど、小さな変化に気が付くことが早期発見につながります。

