
乳歯遺残
症例
小児科
病態
乳歯遺残とは、永久歯が生えてきたにもかかわらず、乳歯が抜けずに口の中に残っている状態を指します。通常、犬の乳歯は生後4〜6か月頃に自然に抜け、永久歯に生え変わりますが、この過程がうまくいかず、乳歯と永久歯が同時に存在してしまうことがあります。

原因
主な原因は以下の通りです:
遺伝的素因:特に小型犬や短頭種(チワワ、ポメラニアン、ヨークシャーテリア、トイプードルなど)に多く見られます。
乳歯の歯根の吸収不全:乳歯が抜けるには根が吸収される必要がありますが、この過程が不完全だと残ります。
外傷や病気の影響:口腔内の異常や外的要因が乳歯の自然脱落を妨げることもあります。
症状
乳歯と永久歯が並んで生えている(重複歯列)
歯並びの異常・噛み合わせの悪化となる可能性(不正咬合)
歯垢や歯石の蓄積(歯の間に汚れがたまりやすくなる)
歯肉炎や歯周病のリスク増加
口臭の原因になることも
見た目では問題がなくても、将来的な口腔トラブルの原因となることがあります。
検査
視診:口を開けて歯の状態を観察。乳歯と永久歯の重なりがあるかを確認します。
歯科レントゲン検査:乳歯の根の状態や永久歯の位置を確認します。歯肉の中で異常がないかを調べるのに有効です。※この検査は全身麻酔下での検査となります。


治療
残存乳歯の抜歯が基本的な治療です。
永久歯がすでに生えてきているにもかかわらず乳歯が残っている場合は、自然脱落を待たずに早めに抜歯することが推奨されます。
全身麻酔下での処置が一般的です。乳歯の根は意外と深いため、無麻酔では困難で危険を伴います。
避妊・去勢手術と同時に行うことも可能です。生後6~7か月前後での処置が多いです。
予後と予防
抜歯後の経過は良好なことが多く、噛み合わせや歯並びが正常化する可能性があります。
適切に対処しないと、将来的に歯周病や口腔内トラブルのリスクが高まります。
定期的な口腔チェックと、生後5~6か月前後での歯科検診が予防につながります。
まとめ
乳歯遺残は一見軽度に見える問題ですが、長期的には歯の健康や噛み合わせに大きな影響を与えることがあります。小型犬を飼っている方は特に注意が必要です。歯のことで気になることがありましたら当院までお気軽にご相談ください。