猫の甲状腺摘出
症例
軟部外科
外科治療の適応
外科治療を行うのは基本的には以下の2つです。
甲状腺機能亢進症に対する根治を目的とした場合
甲状腺腫瘍が疑われる場合
甲状腺は首のところに2対あるホルモンを分泌する臓器です。疾患の原因となる側の甲状腺を摘出することで、ホルモン値の正常化は 計りますが、両側性の場合は2回に分けて両方摘出する場合もあります。また、慢性腎臓病や心臓病の程度によっては、内科的治療の方が適切な場合もあります。
実際の症例
11歳MIX 避妊猫
甲状腺が腫瘍化し、数値が不安定になってきたため、甲状腺摘出に至る。
術後翌日に退院し、ホルモンやその他の血液検査の数値は安定。
甲状腺機能亢進症は、高齢猫に多い内分泌疾患の一つで、甲状腺から過剰にホルモンが分泌される事で様々な問題が起こります。甲状腺ホルモンは代謝に関わるホルモンであり、過剰に産生されることで臨床徴候としては、食欲増進、体重減少、多飲多尿、活動性の亢進、嘔吐、下痢、高血圧、頻脈などがあります。
日本では、主に内科的治療が選択される事が多く、中でも抗甲状腺ホルモン薬の投与が一般的です。投薬量の調整が必要ですが、量が決まれば比較的安定した管理が可能です。また、ヨード制限食による治療も、経験的には安定した数値が得られ、治療効果が高い印象です。内科的治療の欠点としては、投薬治療や食事管理を生涯に渡って継続しなければならない点です。つまり投薬が困難であったり、食事を食べてくれない場合に疾患のコントロールができないことがあります。そのような場合にも外科が選択肢として浮上してきます。
外科手術のメリットとデメリット
メリット
ホルモン疾患や腫瘍の根治的な治療となりうる
日々の内服、検査から解放され通院回数が少なくなる
猫の内服によるストレスから解放され、QOL(生活の質)向上につながる
術後98%以上の症例で甲状腺ホルモンを与える必要がなくなる
内服治療や検査を継続するより長期的にみると安価になる
デメリット
外科手術による血管や神経損傷(反回神経や迷走神経)リスクがある
甲状腺機能低下症になるリスクがある
上皮正体機能低下症になるリスクがある
取り残しによる再発のリスクがある