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ウォブラー症候群

症例

神経科

ウォブラー症候群とは?

「ウォブラー」とは「ぐらつく」という意味で、実際にこの病気にかかった犬は、首の痛みや神経麻痺により不安定な歩様を示すことがあります。医学的には、「頚部脊髄圧迫症候群」とも呼ばれ、頚椎の変形や不安定性により脊髄が圧迫されることで発症します。一般的に、ドーベルマンやグレートデン、マスティフ、セントバーナードなどの大型犬、超大型犬にみられます。頚椎の形成異常や不安定症によって、頚部脊髄が圧迫され、頚部椎間板ヘルニアと症状が似ています。


ウォブラー症候群
ウォブラー症候群



原因と好発犬種

原因は年齢や犬種により異なりますが、大きく以下の2タイプに分けられます



①若齢型(骨形成異常)

 → ドーベルマン、グレートデンなどに多く、椎体の骨発育異常によって起こる




②中高齢型(椎間板疾患+靱帯の肥厚)

 → ラブラドール・レトリーバーなどに見られ、加齢性変化が背景にあります




主な症状

  • 後肢のふらつきやもつれ(運動失調)

  • 前肢の可動域制限や筋萎縮

  • 首の痛み(触ると嫌がる)

  • 起立や歩行の困難

  • 症状は徐々に進行することが多いが、急性悪化もありうる


診断

診断には神経学的検査に加え、画像検査(MRIやCT)が必須です。特にMRIでは脊髄の圧迫部位や髄質の変性の有無を視覚化できるため、確定診断や手術判断に重要です。


治療法

保存療法(軽症例または手術不適応例)

  • ステロイドやNSAIDsなどの消炎鎮痛剤

  • 活動制限、ハーネス使用、滑り止めマット

  • 理学療法や補助具の活用


外科治療(中等度~重度例)

圧迫の原因と部位により異なりますが、主に以下の術式があります:

  • 腹側からの椎体固定術(ベントラルスロット)

  • 椎体間スペーサー+スクリュー固定

  • 椎弓切除(laminectomy) など


手術の成否は術前の神経状態・圧迫の重症度・術後のケアに大きく左右されます。



予後と注意点

  • 早期介入により症状の進行を抑制できる可能性がある

  • 重度の麻痺が進行している場合、歩行回復は困難

  • 大型犬種に多いため、成長期の骨管理や日常の姿勢配慮も重要



まとめ

ウォブラー症候群は、犬のQOL(生活の質)に大きく関わる神経疾患のひとつです。特に大型犬でふらつきが見られた場合、加齢や単なる運動不足と片付けず、早めの神経学的評価が望まれます。確定診断と適切な治療方針の決定には、MRI検査と整形外科的判断が非常に重要となります。

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