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想像妊娠!?犬の偽妊娠と乳腺炎

みなさん、こんにちは。 獣医師の岩上です。

最近は厳しい寒さの日も増えて、先日は雪も降りましたね❄️

暖かくして、体調を崩さないように過ごしていきましょう。


さて今回は、わんちゃんには想像妊娠のようなものがあるよというお話です。



わんちゃんには年2回の発情期があり、乳腺や陰部が腫大し、陰部から出血するといった症状がみられます。



通常であれば、卵巣から卵子が排卵された後に黄体を形成され、妊娠しなかった場合には黄体が自然に小さくなっていくとともに乳腺や陰部の腫大も取れて元に戻っていくというサイクルを繰り返します。


しかし、妊娠していないのにも関わらず、乳腺が著しく腫大し、乳汁が分泌されたり、巣作り行動などの行動的な変化も認められたり、いわゆる想像妊娠のような状態になる子が時々います。


この状況を偽妊娠と呼びます。



偽妊娠はなぜ起こるの?

発症にはホルモンが大きく関与しています。

詳しい機序は明らかになっていませんが、黄体から分泌されるプロジェステロンへの暴露と、その濃度が減少に伴って脳の下垂体から分泌されるプロラクチンというホルモンの影響などが原因となって偽妊娠が起こるとされています。


元々は群れを作って野生生活をしていた時代に、子犬を群れの集団全体で世話をしていくために起こるようになった現象と言われていますが、ヒトに飼われるようになり、現在では群れで生活し、子育てをしていく環境がないため、自然に退化していったと考えられます。



最近の偽妊娠は室内で大切に飼育され、孤独を感じづらい子に多く見られる傾向があるため、精神的な要因も発症に関与していると考えられていますが、発症する子、発症しない子、発症のタイミングを事前に把握することは難しいです。

ただ、一度発症した子は発情毎に偽妊娠を繰り返すことが知られてます。




偽妊娠の症状は?

妊娠犬と同様に乳腺が腫大、乳汁の分泌、食欲不振といった症状のほか、神経質になったり、攻撃的になったりといった精神的な変化、毛布などで巣作り行動をし始めたり、ぬいぐるみなどのおもちゃを可愛がり始めるといった行動的な変化も認められます。




治療は必要?

あまりにも攻撃性が強く出てしまう場合や、乳腺に痛みまで出る場合などは、ホルモン薬を使用する場合も稀にあります。

しかし、偽妊娠は生理的な現象であり、時間の経過とともにホルモンバランスが戻れば、自然と収まっていくため、基本的には特別な治療が必要ない場合が多いです。



乳腺炎とは?

乳腺炎は大腸菌やブドウ球菌などの常在菌が乳頭から感染し、乳房に炎症を起こす病気です。


症状としては乳腺の熱感、硬結、痛みといった局所的な症状を示しますが、重度になると発熱や食欲不振、元気消失といった全身的な炎症徴候を示すようにまでなります。

治療は抗菌薬等を使っておこないます。



この乳腺炎は妊娠中だけでなく、偽妊娠中の乳腺にも起こりやすいです。



偽妊娠、乳腺炎を防ぐためには?

上記に書いた通り、偽妊娠自体は生理的な現象であり、治療の必要もないものですが、偽妊娠を起こすことでの体調面や精神面での不安定さは、その子にとって、ストレスに繋がりますし、感染を起こせば乳腺炎といった病気を引き起こしてしまいます。

よって、もし今後子供が欲しいという希望がないのであれば、避妊手術をしてあげることをお勧めします。

それが愛犬にとっても、飼い主様にとっても幸せに過ごせる一つの方法です。



いかがでしたか?

避妊手術は子宮卵巣の病気を防いだり、乳がんの発生率を下げたりするだけでなく、偽妊娠や乳腺炎の発症も防いでくれます。

若い時だけでなく、中年齢の子でも遅くはありません。

もし、手術を迷われている方や年齢的に悩まれている方がいらっしゃいましたら一度獣医師までご相談ください。



アリアスペットクリニック

獣医師

岩上

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