慢性腎臓病

慢性腎臓病（CKD：Chronic Kidney Disease）とは

慢性腎臓病（まんせいじんぞうびょう）とは、腎機能が徐々に低下してくる疾患のことを言います。

腎臓は身体の血液をろ過し、老廃物や余分となった水分を尿として排泄する役割を持っている臓器です。この働きが徐々に衰えることで、全身に様々な症状を示します。

特に、猫は動物種的に発症しやすい疾患とされており高齢の猫ちゃんで発症が多い傾向となっています。

原因は？

原因には様々あり、

• 加齢による腎臓の変性

• 遺伝的要因

• 慢性的な脱水

• 腎炎や腎結石、腫瘍などによる二次的な要因

などが具体的な例として挙げられます。

症状は？

症状も様々ありますが、特に特徴的な症状として飲水量の増加や、尿の量が増えるといった、多飲多尿（たいんたにょう）という特徴的な症状があります。

それ以外にも、

• 食欲不振

• 体重減少

• 脱水

• 消化器症状（嘔吐など）

• アンモニア臭のような口臭

• 元気消失

• 毛艶が悪くなる

などのような他の疾患でも見られるような症状も見られることが、進行してくるとしばしば見られます。

初期の頃には症状が見られない場合もあるため、健康診断などで偶発的に見つかる場合も少なくありません。

診断は？

慢性腎臓病の診断には、

• 血液検査

• 尿検査

• 超音波検査

• 血圧測定

などが一般的な検査となっています。

疾患の進行の程度には、慢性腎臓病の重症度を客観的に分類する国際的な基準としてIRIS（International Renal Interest Society）によるステージ分類が用いられます。

主な評価には、以下の評価が用いられます。

また、より正確な腎機能の評価に尿中の蛋白量や高血圧の評価も用いる場合もあります。

治療は

残念ながら、慢性腎臓病は完治が見込める疾患ではありません。

しかし、腎臓病の進行を遅らせることで生活の質の維持や、予後の延長が期待できます。

①食事療法

腎臓病の進行の程度により推奨される食事が異なりますが、ミネラルバランスや蛋白などに配慮した食事（療法食）に変更することで腎臓への負担を減らします。

②点滴

水分を身体に入れることで、脱水の改善や老廃物の排出を促進させる効果があります。

③降圧剤

高血圧が認められる場合には、高血圧によって腎臓への負荷がさらに悪化する可能性があるので血圧を下げる治療を検討する場合があります。

また、慢性腎臓病のステージ2−3においては腎臓の血管を広げ腎血流を改善するお薬を使用することで、腎臓の寿命の延長に繋がるといった報告があります。

④リン吸着剤

慢性腎臓病が進行してくると、腎臓でのリンの排泄ができなくなってきます。

リンが体内で蓄積すると、血管が硬くなり（石灰化）更なる腎臓病の悪化に繋がります。

このリンを吸着することで、腎臓病の進行を遅らせます。

⑤制吐薬や食欲増進剤

慢性腎臓病による、吐き気や食欲不振に対応するために使用する場合があります。

まとめ

慢性腎臓病は一度発症すると完治することはない疾患です。

ですが、うまく付き合っていければ長く一緒に過ごすこともできる疾患となっています。

様々な治療の選択肢がありますが、その子によって変わってきますので定期的な通院において、進行度の評価や治療方針の検討などが重要です。

また、当院でも健康診断なども実施しておりますので慢性腎臓病の早期発見、早期治療に繋げることができます。もし、心当たりや不安なことがありましたらぜひそれらも活用ください。