
巨大食道症
症例
消化器科
● 巨大食道症とは?
食道とは、口から飲み込んだ食べ物を胃まで運ぶ“通り道”のような器官です。「巨大食道症(きょだいしょくどうしょう)」とは、この食道が異常に広がり、うまく食べ物を胃まで運べなくなる病気です。食べ物や水が食道にたまってしまい、吐き戻しや誤嚥(ごえん)性肺炎の原因になることがあります。
● 主な症状
食後すぐに食べた物を吐き戻す(吐くというより、口からこぼれる感じ)
痩せてきた、体重が増えない
咳が出る、呼吸が苦しそう(誤嚥性肺炎によるもの)
食事中にむせることがある

● 原因は何?
巨大食道症には、「先天性」と「後天性」の2つのタイプがあります。
先天性:若いうちに診断されることが多く、ラブラドール・レトリーバーやジャーマンシェパードなどの犬種に多く見られます。ミニチュア・シュナウザーでは遺伝によるものも報告されています。
後天性:高齢の子で見られ、神経や筋肉の異常、ホルモンの病気(甲状腺機能低下症など)などが関係することがあります。ミニチュア・ダックスフンドでは後天性の特発性巨大食道症(明らかな原因がない)が多く発生しています。
● 診断と検査
レントゲン検査:食道の拡張の様子がわかります。
バリウム造影検査:飲み込んだものがどのように流れるかを観察します。
血液検査:基礎疾患の確認のために行います。
● 治療とケア
何か他の病気が原因で起こっている後天性巨大食道症に関しては、まずその病気の治療から行います。その病気が治ると、巨大食道症も改善していく可能性があります。しかし、先天性の場合や根本的に治すのは難しい場合も多いため、食事の工夫や生活環境の調整がとても大切になります。
立った姿勢での食事(例:巨大食道症専用椅子、斜めの台などを使う)
流動食やペースト状の食事など、その子が飲み込みやすい形状にしてみる
少量ずつ、回数を分けて与える
誤嚥予防のために食後もしばらく立った姿勢を保つ
誤嚥性肺炎の早期発見と治療
日常ケアでのコントロールが難しい場合は胃瘻チューブの設置が必要になる場合もあります。

● 飼い主さまへ
巨大食道症は日々のケアがとても大切な病気です。最初は大変に感じることもありますが、適切な食事管理と工夫で元気に過ごしている子もたくさんいます。気になる症状があれば、お早めにご相談くだ さい。