
心室中隔欠損症(VSD)
症例
循環器科
心室中隔欠損症(Ventricular Septal Defect:VSD)とは、先天性の心疾患の一つです。図の緑色のラインで囲った、心室中隔という左心室と右心室のを隔てるしきりに一部が開き欠損孔という穴が生じる疾患です。

穴があることで血流が変化し、通常の動物よりも肺や心臓に負担がかかり様々な問題が生じる可能性があります。
⚪︎犬よりも猫がなりやすい?
犬、猫共に先天性心疾患自体が珍しい疾患となっていますが、
犬では大型犬よりも小型犬で多いと報告されています。また、猫の先天性心疾患の中では心室中隔欠損症は1番多いとされています。
⚪︎症状は?
症状は欠損孔のサイズにより変化します。小さければ無症状のことも多いです。
大きい欠損孔がある場合、心臓のサイズが大きく変化することにより
疲れやすい(運動不耐性)
咳が出る
成長不良
チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になる状態)
などの症状が出る場合があります。

特に、チアノーゼは重篤な症状でありそのような症状が出る際にはかなり進行している可能性もあります。
⚪︎診断法は?
聴診や超音波やレントゲンなどの画像の検査での評価が重要となります。
聴診では心雑音が聴取されます。場合によっては胸に手を当てた際にざらざらとした触感(=スリル)を感じる場合もあります。
画像検査では、心臓のサイズや欠損している穴の大きさ、他の合併症の有無などを評価します。先天性の心疾患がある子は一つでなく様々な先天性心疾患が複合している場合も少なくありません。

⚪︎治療は?
①経過観察
欠損孔のサイズが小さく、心臓のサイズなどに影響がない場合、治療対象とならない場合があります。若い子で発見された場合、成長に合わせて心臓の形態も変化するため、成長してから治療介入が 必要な場合もあります。
②内科療法
心臓のサイズが大きく変化している際には利尿剤や強心剤の使用を検討します。
③外科療法
欠損孔を麻酔下で整復を行う、根治的治療です。
進行の程度により手術が禁忌となる場合があるので、超音波検査などでの検査での判断がとても重要となっています。
⚪︎予後は?
小さな欠損孔であれば予後は良好に過ごせる場合が多いです。
大きな欠損孔の場合や、肺血管への負担が持続的に増えたことで肺高血圧症に移行してしまう場合は治療が困難な場合や予後が悪いことが多いです。
肺高血圧症がさらに進行すると、血液循環の流れが乱れアイゼンメンジャー症候群へ進行する場合があります。
アイゼンメンジャー症候群にまで進行した場合、治療がさらに困難になり予後が悪いでです。
⚪︎まとめ
先天的な疾患のため予防することは難しいです。若い子での発見が多い疾患ですが、若い子であると心臓の発達が未熟なため、成長に伴って心臓の形態が変化する場合があります。
早期の発見や、発見した場合は定期的な検診などが重要です。
何か、気になることがありましたらお気軽にお問い合わせください。