
肺高血圧症
症例
循環器科
肺高血圧症とは
肺高血圧症とは、肺動脈内の血圧が上昇する病気のことを指します。
肺動脈の血管が細くなり、血流量が減少することで肺でのガス交換の効率が悪化します。(=酸素の身体への取り込みがしづらくなる)
この状況が持続し進行すると、右心不全につながっていきます。
肺高血圧症の原因は?
肺高血圧症の原因には大きく6つに分類されます。
①原発性(先天性)
②左心不全から続発するもの
③肺疾患・低酸素血症から続発するもの
④血栓などによる肺塞栓から続発するもの
⑤フィラリア感染から続発するもの(フィラリア症についてはこちら)
⑥特発性(腫瘍などが原因になることも)
の6つに大きく分類されます。
犬の肺高血圧症の原因は、およそ半数が僧帽弁閉鎖不全症による左心不全から続発するものが占めていると言われています。(僧帽弁閉鎖不全症はこちら)
症状は?
肺高血圧症の際に見られることの多い臨床症状として、
咳
失神、虚脱
呼吸困難
チアノーゼ
腹水による腹囲膨満
浮腫(むくみ)
があげられます。


診断は?
肺高血圧症の確定診断は、人医療領域では肺動脈カテーテルを用いた動脈圧測定が必要です。
しかし、獣医療領域でカテーテル検査を実施し確定診断することは麻酔や手技的なリスクの観点からあまり一般的な診断方法ではありません。
なので、獣医療領域では主に臨床症状や画像検査などで肺高血圧症を疑う所見に合致するものを集め診断します。
そのため、超音波検査やレントゲン検査など(場合によりCT検査)がとても重要です。
また、肺高血圧症の原因となる基礎疾患がある場合にはそちらの治療も同時に行う必要があるため、血液検査などの他のスクリーニング検査も重要となってきます。
治療法
①基礎疾患の治療
基礎疾患がある場合、肺高血圧症の更なる悪化にもつながるリスクがあるため肺高血圧症の治療も並行し必要となってきます。
②肺血管拡張薬
肺動脈を広げ、肺血管の血圧を下げます。肺血管を広げることで肺での酸素交換の効率が改善し、臨床症状の改善が見込めます。
③利尿剤
心不全の症状がある際に使用をします。
④抗血栓薬
血栓による塞栓で肺高血圧症が生じていることが疑われる場合、新たな血栓形成・塞栓のリスクを軽減させるために用います。
予後は?
原因や重症度、進行の程度により異なりますが、あまり良好でないことが多い疾患です。
しかし、早期発見し治療を実施することで、その後の生活の質を改善することは十分にできる疾患です。
その子によって、疾患の進行により内服薬や治療方針は変わるので、診断がついてからも定期検診は重要となっています。
当院では心臓の検査を含めた健康診断や、循環器内科の治療相談、二次病院への紹介も受け付けております。お気軽にご相談ください。