猫のお腹に「小さなしこり」を見つけたら 〜小さくても油断できない 猫の乳腺腫瘍〜
- 菊地

- 1 日前
- 読了時間: 5分
もしも猫のお腹を撫でているときに、
「あれ?こんなところに小さなしこりがある」と気づいたら、
「まだ小さいから、もう少し様子を見ても大丈夫かな」
そう思われる飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
しかし、そのしこりが乳腺にできたものであれば、「小さいから大丈夫」とは言えません。

猫の乳腺にできる腫瘍は、犬と比べて悪性の割合が非常に高く、報告によって差はありますが、約80~90%が悪性とされています。
そのため、猫の乳腺にしこりを見つけた場合は、たとえ数mm程度の小さなしこりであっても、乳腺癌の可能性を十分に考えなければなりません。
○乳腺癌は「大きくなる前」に治療する
猫の乳腺癌では、腫瘍の大きさはその後の経過に影響する重要な要因の一つです。
過去の研究で、腫瘍の大きさが3cmを超える猫は、それより小さい猫と比較して、生存期間が短くなる傾向が繰り返し報告されてきました。
そして、この「腫瘍が大きいほど予後が悪い」という知見は、比較的新しい研究でも支持されており、2025年に発表された75頭の猫の乳腺癌を対象とした研究では、3cmを超える腫瘍は、短い生存期間と有意に関連する予後不良因子であることが示されました。
ただし、ここで注意したいのは、「3cm未満なら安心」という意味ではありません。
さらにこの研究では、腫瘍の大きさだけでなく、腫瘍が周囲の組織に広がっているか、
血管やリンパ管に入り込んでいるか、リンパ節に転移しているかなどが、その後の経過に関係することが示されました。
こうした病気の広がり方の違いをより反映できるように、従来のステージ分類をさらに細かく分けた新しいステージ分類も提案されています。
つまり、「しこりが何cmあるか」だけでなく、「その腫瘍が体の中でどこまで広がっているか」を総合的に確認することで、今後の経過を予測します。
そのため、乳腺にしこりが見つかった場合には、画像検査などを行い、転移がないかを確認することがあります。
例え小さな乳腺癌でも、リンパ節転移や血管・リンパ管への浸潤を起こしていることがあるため、小さい=良性ではありません。
しこりが小さいうちに見つけて、病気が広がる前に適切な治療を始めること。
これが、猫の乳腺癌と向き合ううえで大切なポイントの一つです。
○治療の中心は「手術」
猫の乳腺癌では、外科手術によって腫瘍を完全に切除することが治療の中心です。
抗がん剤などの化学療法については、生存期間を延ばす効果を明確に示す十分なエビデンスは得られていません。
だからこそ、最初の手術が非常に重要です。
そして、ここで大切なのは、「しこりだけを取ればいい」とは限らないということです。
猫の乳腺は、左右それぞれに複数の乳腺が連なって存在しています。
また、乳腺癌は目に見えるしこりだけでなく、周囲の乳腺組織やリンパ管などに広がっている可能性があります。
そのため、猫の乳腺癌では、しこりだけを部分的に切除する方法よりも、より広い範囲の乳腺を一連の組織として切除する手術が検討されます。
特に片側の乳腺に腫瘍がある場合には、片側乳腺全摘出術が重要な治療選択肢の一つです。
これまでの研究では、より広範囲の乳腺切除を行うことで、より保存的な手術と比較して、局所再発を減らせる可能性が示されています。
ただし、すべての猫に同じ手術を行うわけではありません。
腫瘍の数や位置、大きさ、左右の乳腺への広がり、リンパ節転移、猫の全身状態などを総合的に評価し、片側乳腺全摘出や両側の段階的な手術など、適切な治療方法を獣医師と相談して決定します。
重要なのは、「しこりだけを小さく取る」ことを目的にするのではなく、腫瘍を取り残さないことを考えて、適切な範囲を切除することです。
○飼い主さんへのお願い
猫の乳腺癌は、初期には痛みや食欲低下など、目立った症状がないことも少なくありません。
そのため、飼い主さんが偶然触って見つけた小さなしこりが、実は乳腺癌の最初のサインということもあります。
だからこそ、「もう少し大きくなったら病院へ行こう」ではなく、「小さい今だからこそ、病院で相談しよう」と考えていただきたいです。
腫瘍が小さい段階であれば、腫瘍が周囲へ広がったり、リンパ節や肺などへ転移したりする前に治療できる可能性があります。
普段から愛猫のお腹を優しく触って、
乳頭の周りに硬いしこりがないか
以前はなかった小さな膨らみがないか
しこりが大きくなっていないか
ほかの場所にも同じようなしこりがないか
を確認してみてください。

そして、愛猫のお腹に小さなしこりを見つけたら、「もう少し様子を見よう」と待たずに、ぜひご相談ください。
大切な家族に、少しでも長く健やかに過ごしてもらうため、力になれましたら幸いです。
アリアスペットクリニック
獣医師 菊地
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