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輸血について。ご存じですか?


ブログをご覧のみなさま、こんにちは、

獣医師の大塚です。



みなさん、犬・猫の輸血についてどのくらいご存じですか?



日本赤十字社のHPを見ると輸血について以下のように記載されています。


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輸血は、血液成分を体内に入れる移植の一つであり、一定のリスクを伴うことから輸血療法の性質や考え方を理解した上で危険性と効果を勘案し、安全かつ適正な輸血を行う必要がある。

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日常的に耳にする『輸血』ですが、立派な臓器移植の一つである以上、決して簡単な医療行為ではなく、副反応というリスクを伴うものなのです。



また、輸血の目的として、

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血液中の赤血球などの細胞成分や凝固因子などの蛋白質成分が減少した時や機能が低下した時に、その成分を補充し臨床症状の改善を図ることにある。

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とされています。


この考え方は獣医療でも同じです。




輸血療法というのは根本治療ではなく、あくまで臨床症状を改善するための補充療法でしかありません。



輸血療法が適応となる疾患の代表は、やはり急性出血による貧血でしょう。

私たち動物の骨髄では絶えず新しい血液が造られ、古い血液は破壊されています。


軽度〜中程度の貧血であれば骨髄での血液産生機能で対応可能ですが、

交通事故や腹腔内出血など、一度に大量の血液が失われてしまった場合、

骨髄で一生懸命血液を造っても失った血液分をすぐに補充することはできません。


一般的に血液の再生には3−4日の時間を要します。


その間、体内に血液が少ないということは循環を維持できなくなってしまいます(ショック状態)。


輸血はいわば、自分で血液を造る時間を稼ぐために一時的に他人の血液で置き換えておくだけなのです。



なので輸血自体はその疾患を治す治療となるわけではなく、薬の効果が出るまでだったり、骨髄で十分な血液の産生できるまでの時間稼ぎとして活用されています。



では、輸血は何度でも行うことができるのでしょうか。






答えはノーです。




前述した通り、輸血は他人の血液を移植する臓器移植の一つです。

医療ドラマなどでも耳にしたことがあるかもしれませんが、複数回輸血を繰り返すと

輸血した血液内のリンパ球によって輸血された側の血液が攻撃を受けたり、

輸血される側に他の血液に対する抗体ができてしまい、拒絶反応が起きてしまいます。



もちろんこの反応は初回の輸血でも起こる可能性はあります。


そのため、人医療では近年、輸血用血液からリンパ球を除去したり、放射線を照射することでリンパ球の働きを弱めてから輸血を行うことが多くなりました。


しかし、獣医療ではまだそのような技術は発達していません。




では、どうするのか?


不適合輸血を避けるために事前にしっかり血液型を確認し、

交差適合試験(輸血用血液と患者の血液が適合するかどうか調べる試験)を実施してから輸血を行います。

もちろんこれらの検査をしっかり行なっても副反応が起きてしまう可能性はあります。


なので輸血する際は、30−60分間隔でバイタルチェックを行いながら小さな変化にも気づけるように病院全体で監視しながら行います。




今回は輸血についてのお話をしてきました。


ではわんちゃんや猫ちゃんにも人のように血液型があるのでしょうか。

血液型があるのあればどのような血液型があるのでしょう。




次回は、犬と猫の血液型について詳しくお話していきます。



アリアスペットクリニック

獣医師 大塚

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