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猫のマダニ予防とSFTSの関連性

症例

感染症科

SFTS(Severe Fever  with Thrombocytopenia Syndrome)とは、日本語で重症熱性血小板減少症候群という疾患です。あまり聞き馴染みのない病気ですが、今後重大な疾患になる可能性のあるものとなっています。


⚪︎SFTSとは?

SFTSウイルスが原因で引き起こされる感染症です。犬で重症化することは稀ですが猫で感染すると重症化しやすいとされています。また、人にも感染するリスクのある感染症となっています。


SFTSに感染した場合、猫での致死率は6−7割とされていて、人でも2割程度の致死率があります。人では近年、SFTSウイルスに対する治療薬が研究・開発されている報告がありますが猫などの動物では確立された治療法がまだありません。




従来は西日本での感染が主とされていた疾患ですが、近年では温暖化の影響により関東や東北などの東日本での発生も報告されるようになってきています。


⚪︎どのように感染するのか?


SFTSの感染経路として最も重要なのは、マダニによる咬傷です。




体内にSFTSウイルスを持っているマダニが存在しその個体によって噛まれると体内でウイルスが増殖し症状が出てきます。


また、感染した動物からでた血液や体液からも感染するリスクがあります。実際に日本国内でも感染した猫から人に感染して亡くなってしまったという事例もあります。



⚪︎症状は?

症状は急速に出る場合が多く

  • 黄疸

  • 発熱

  • 嘔吐、下痢

  • 食欲不振

  • 血便、紫斑

  • 神経症状(意識レベルの低下、けいれんなど)


が出るとされています。

症状の進行は急速であるため、治療に反応する前に亡くなってしまうことも少なくありません。


⚪︎診断は?

血液検査や、PCR検査などで診断します。

また、ノミやマダニ予防の実施しているか、室内飼育であるかどうかも診断するにおいて重要な要素となります。




⚪︎治療法は?

先述の通り、動物での明確な治療法は確立されておらず、状況に応じて輸液療法や輸血のような症状に対する治療が中心となってきます。

しかし、この病気は予防することで感染するリスクを大きく減らすことができます。


⚪︎予防法は?

感染の原因となるマダニの感染を予防することで、SFTSの感染リスクを大きく減らすことができます。予防法には何個かあるので紹介させていただきます。


①予防薬の塗布

SFTSの感染予防として最も重要なのが、マダニの予防です。

ある研究では、SFTSに感染した猫のうちおよそ7割がマダニの予防を全く実施していなかった、あるいは予防が十分でなかった猫との報告もありました。


当院ではマダニの感染予防として、スポットタイプの予防薬の1年間通しての投与を推奨しています。

オールシーズンでの予防を推奨しています。
オールシーズンでの予防を推奨しています。

また、予防薬には、マダニだけでなくフィラリアやノミなどの寄生虫に対しての予防効果も含まれています。フィラリアやノミも命の危機となるような疾患のリスクとなるので、予防することを推奨いたします。(フィラリア症についてはこちら)


②室内飼育

SFTSの感染の原因のおよそ9割が野外でのマダニとの接触です。

草むらや野山にマダニは生息していることが多いので、そのような場所への立ち入りを制限することでマダニとの接触・SFTSの感染を予防することができます。




猫が直接接触せずとも人がそのような場所に立ちいることで、人の体にマダニが付着しそれをきっかけに屋内に侵入し感染してしまう恐れもありますので、やはり予防薬の投与は重要となっています。また、感染が疑われる動物と接触する際には防護服の着用を実施することで飼い主様自身への感染リスクを減らすことが可能です。


⚪︎まとめ

SFTSとは、関東エリアではまだ馴染みのない疾患ですが今後温暖化により広がってくる可能性のある疾患です。


感染を起こしてしまうと確立した治療法がなく、特に猫ちゃんでは致死率の高い恐ろしい疾患です。


予防を毎月一度実施するだけで、感染のリスクを大きく減らすことができます。まだ実施されていなかった猫ちゃんもいらっしゃいましたら、今からでも遅くありませんので実施していきましょう。




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