三重県の獣医師ご逝去に寄せて──命を失った現場から、私たちが学ぶべきこと
- アリアスペットクリニック
- 6月13日
- 読了時間: 3分

本日、三重県内の開業獣医師が、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染し、お亡くなりになったという報道がされました。感染源は、SFTS陽性のネコを治療していた際のものと見られています。呼吸困難などの症状が5月に出始め、数日後に帰らぬ人となったとのこと。
三重県獣医師会からは各県獣医師会に対し、ガウンや手袋、ゴーグルなどのPPE(個人防護具)着用を徹底するよう注意喚起が出されました。
まずは、献身的に動物と向き合い続けた獣医師の方へ、心よりご冥福をお祈りいたします。そしてこの痛ましい出来事から“他人ごとではない”と、私たちも深く受け止めるべきです。
🦠 SFTSとは? 改めて知るべき“敵”
SFTSはマダニが媒介するウイルス感染症。潜伏期間は約6〜14日で、発熱・嘔吐・下痢・血小板減少などが起こり、重症化すれば呼吸不全や意識障害に至ることも。致死率はヒトで最大20%、ネコでは約70%にも上るとされます。

SFTSは、2013年に国内で初めて患者が確認されてから、例年およそ40人から130人ほど報告されていて、ことしは今月1日までに56人が報告されています。
2025年の患者数を都道府県別にみると▽高知県と大分県で6人、▽長崎県で5人、▽三重県と兵庫県、鹿児島県で4人などと主に西日本から報告されています。
🐾 獣医師だけではない、ペット介在型感染のリスク
野良猫や外飼いペットからマダニ感染するケースは増加傾向です。実際、重症化した猫の治療に従事した獣医師が感染する事例が今回発生し、ネコ→獣医師という感染経路が現実のものとなりました。加えて、ヒト同士の感染例も報告されており、「自分は大丈夫」とは言えない時代です。
🛡 今すぐできる5つの予防策
1. ヒトにおけるマダニ対策
山林・草むらに行く場合は長袖・長ズボン・帽子を着用、ズボンは靴下の中へ
虫除け(DEETまたはイカリジン配合)を使用
帰宅後はシャワーで全身チェック、特に頭部・脇・股を念入りに
マダニに咬まれたら自力で取らず、医療機関へ直行。潜伏期間内の発熱・異変時は、刺咬歴を必ず伝えてください。

2. ペットの予防
完全室内飼育が最も安全
月1回のダニ駆除薬を定期投与(滴下剤・内服薬など)
草むら散歩を控え、帰宅後は被毛をチェックして清潔に。


3. 動物病院での感染対策
SFTSが疑われる動物には手袋・マスク・ゴーグル・防護服を着用
可能なら隔離スペースを用意し、処置後は徹底消毒
感染疑い例はすみやかに保健所へ報告
4.野生動物・死骸との接触をしない
感染症を媒介するリスクがあるため、絶対に触らない・近づかない。
🏥 動物病院として伝えたいメッセージ
「ペットのマダニ対策は、あなたとその家族の命を守ることです」
「外で過ごすペットには、毎月の駆除薬が不可欠」
「嘔吐・下痢・発熱などの症状が出たら、すぐに受診してください」
我々は、獣医療従事者として、飼い主さまへ正しい知識を伝える責任があります。今回の悲劇を無駄にしないためにも、「かからない」防御策こそ最善の治療です。
✏️最後に
三重県で命を落とされた獣医師の方は、日々ペットのために尽くされていたはずです。その姿を心に刻み、私たちも日々の医療の現場で、その危険性を少しでもお伝えしてまいりたいと思います。
このブログを通じて、一人でも多くの命が守られますように—そんな思いとともに書かせていただきました。
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