動物病院での献血システムについて
- アリアスペットクリニック

- 9月10日
- 読了時間: 4分

こんにちは。
アリアスペットクリニック獣医師の大塚です。
皆さんは「献血」と聞くと何を思い浮かべますか?
駅前で見かける献血カー?
大きな街にある献血センター?
駅前などで「A型◯人、O型◯人不足しています」などのパネルを持って献血を呼びかける人?
日本では現在毎年約550万人の方が献血申し込みをしているそうです。
(日本赤十字社 血液事業の現状 より)
かく言う私も先月初めて献血に行ってきました。

想像よりも献血ルームにはたくさんの方がいらしていて、献血の身近さを知りました。
そして採血された自分の血液がいつか誰かのために役に立つと思うと、少し誇らしい気持ちになりました。
さて、それではみなさんが献血した血液は採血されたのちどこへ運ばれていくのでしょう。
採血した血液は、各地にある血液センターに集められ血液型や感染症などの必要な検査を経た後に血液成分ごとに分けられて血液製剤となり、適切な温度下にて保管されます。
そしていつでも医療機関からの要請に応じられるように24時間体制で供給を行っているのです。
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それでは獣医療ではどうでしょうか。
残念ながら、獣医療では人のような献血システムは無く、基本的に病院単位で血液を確保、保存しています。
そもそも輸血処置ができないと言う病院も数多く存在するのが現状です。
動物病院での献血システムには大きく2種類あり、
1つは人のようにドナーとなってくれるわんちゃん(猫ちゃん)から定期的に採血を行い、
血液成分ごとに分離を行い専用の機械を用いて適切な温度下で保管をして、必要な時に適切な血液製剤を使用するシステム。
(例えば、大量出血の症例には濃厚赤血球製剤という赤血球成分のみのものを、止血凝固異常などで凝固因子が足りていない症例には新鮮凍結血漿やフィブリノゲン製剤という凝固因子を豊富に含んだ製剤を輸血するという感じ)
そして、2つ目は当院のように特別な設備を持たず、輸血が必要な際にドナー登録をしてくれている方々に連絡させていただいて協力いただいたわんちゃん(猫ちゃん)からその場で採血した血液をレシピエント(輸血を受ける側)に輸血を行うシステムです。
ただ、登録してくれているドナーさんはまだ多くなく、基本的には輸血が必要な子の同居犬(猫)や知り合いの方にお声掛けしてもらってドナーを探してもらう場面が多いのが現状です。
ドナーの登録は前者と同じくありますが、定期的に血液を採血して保管しておくための設備がありません。
採取した血液は基本的には24時間以内に使用せねばならず、長期の保存はできません。
残念ながらほとんどの動物病院では後者のシステムで必要な時にいつでも安定して血液を確保できるという環境ではありません。
また、前者のシステムを持つ病院でも人ほどの安定供給は難しいのです。
(もちろん人の献血も日々ボランティアを募っている状態ですので安定していると容易に言える状態ではないのかもしれませんが、、、)
当院でもドナーになってくださる方を常に募集しています。

初回のブログでもお話しした通り、輸血は根本治療ではなく、補充療法です。
しかし、1回の輸血でも命を繋ぐことができる可能性が十分にあります。
人とは違い、輸血採血を行う際にはわんちゃんは性格によって、猫ちゃんは基本的に全頭で鎮静をかける必要があります。
ドナーとして血液を提供する側も、輸血を受ける側もどちらも決して簡単な処置ではありません。
そのため、ドナーになることに関して興味はあっても不安が拭えない方もいらっしゃると思います。
まずはお話だけでも大丈夫ですのでお気軽にスタッフにお声がけください。
おうちのわんちゃん猫ちゃんの血液型を知ることから始めてみませんか?
血液型を知ることが、本人を含め多くの命を救うきっかけになるかもしれません。
ドナーの条件などについては以前のブログをご覧ください。
今日までの4回のブログを通して少しでも犬や猫の輸血療法や献血について興味を持っていただけたら幸いです。
長らくのお付き合いありがとうございました。
アリアスペットクリニック
獣医師 大塚




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