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下痢だけって放っておいてもいいの?
―繰り返す軟便・下痢に隠れているものとは―



■ はじめに



「元気や食欲はあるけれど、下痢や軟便が続いている」
このようなご相談はとても多くあります。


2〜3日ほど下痢が続いても自然に治ることもありますが、


「治ったと思ったらまた繰り返す」というケースも少なくありません。


特定のおやつを食べた後や、外出・来客などのイベントの後にお腹を崩すなど、原因がはっきりしている場合もあります。

そのような場合は、原因を避けることで改善が期待できます。


しかし、原因がはっきりしないまま繰り返す場合や長引く場合には注意が必要です。



■ 重要なポイント


繰り返す・長引く下痢は一度検査をおすすめします。


単発で数日で治る下痢であれば様子を見ることも可能ですが、繰り返す下痢や2〜3週間以上続く下痢の場合には、受診を検討いただければと思います。



■ 長引く下痢を放置するとどうなる?



慢性的な下痢では、見た目に元気でも体の中で変化が起きていることがあります。


・栄養の吸収がうまくいかず、体重が減る

・水分の喪失が増え、脱水になる


・腸の炎症が持続する


・本来治療が必要な病気を見逃す可能性がある



■ 慢性腸症とは?



慢性腸症は3週間以上続く嘔吐、下痢で、血液検査や糞便検査、レントゲンやエコー検査などで原因が特定できないときにつけられる症状の総称です。


慢性腸症は



・食事に反応するタイプ(食事反応性)
・免疫反応が関与するタイプ

・免疫治療に反応しないタイプ
などに分類されます。


ある報告では、慢性腸症の中で食事に反応するタイプが最も多いとされており、そのため診療ではまず食事の見直しから行うこともあります。



■ 下痢の種類について


(小腸性と大腸性)
下痢をしている時の診察では、「小腸性の下痢」「大腸性の下痢」といった説明をすることがあります。


これは原因そのものではなく、解剖学的にどの部位で異常が起きているかを分類し、診断や治療の方向性を考えるためのものです。


「小腸性下痢」「大腸性下痢」について表でまとめると以下のようになります。



■ 小腸性下痢と大腸性下痢の違い


小腸性下痢と大腸性下痢の違い
小腸性下痢と大腸性下痢の違い

※しぶり・・頻回に排便姿勢をとるが排便できていない様子




まとめると、

小腸性下痢では全身症状として嘔吐や体重減少を伴うことがある。

大腸性下痢では、ゼリー状に見える粘膜便、しぶり、鮮血便が見られる。

といった特徴があります。


ただ、状況によっては小腸性と大腸性が混在することもあります。



■ 食事療法の際の選択について


 ▶️小腸性下痢


・療法食の選択は、食物の消化率の低下や栄養素の吸収が障害されるため、高消化性の食事を推奨します。


 ▶️大腸性下痢



・療法食は、水分の吸収率低下、腸内細菌叢の乱れが起きるため炭水化物(食物繊維)が腸内細菌の栄養源となり、有効です。そのため、高線維食をおすすめします。



■ 下痢の原因について



慢性下痢の原因は多岐にわたります。慢性下痢の多くは消化管の異常に関連するとされ、一部の報告では約90%が消化管疾患に由来するとされています。

そのうち約80%が慢性腸症に由来するものと報告されてます。

その他には、慢性腸症以外の腸管異常が20%、そして、消化器以外の疾患が10%と報告されています。



消化管以外の原因としては、



・膵炎


・膵外分泌不全


・肝疾患


・ホルモン異常(甲状腺、アジソン病など)


・尿毒症
などがあります。



一方で、消化管内では



・感染症


・寄生虫


・腫瘍
なども原因となります。



■ こんな時は受診をおすすめします



以下のような場合は、早めの受診をおすすめします。


・下痢が3週間以上続いている


・下痢を繰り返している


・体重が減ってきた


・血便がある


・嘔吐を伴う


・食欲や元気がなくなってきた



■ まとめ



下痢は日常的によく見られる症状ですが、「繰り返す」「長引く」場合は消化管や全身の異常を示す重要なサインです。


・食欲や元気が保たれていても、腸内では炎症や吸収障害が進行していることがあります


・慢性化した下痢は、自然に改善することは少なく、食事反応性腸症や炎症性腸疾患などが

背景に隠れている可能性があります


・原因に応じて、食事療法(低脂肪・加水分解食など)や内科的治療を適切に選択することが重要です


また、下痢が長く続く場合には、脱水や体重減少、栄養状態の低下といった二次的な問題が起こる可能性があるので注意が必要です。


早期に原因を評価し介入することで、よりシンプルで負担の少ない治療で改善できる可能性が高まります。


元気に楽しく過ごせる時間が長くなるようにしたいと思っていますので、少しの変化や体調面で気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。




アリアスペットクリニック

獣医師 堀



参考文献

原著論文・研究

  1. Volkmann M, Steiner JM, Fosgate GT, Zentek J, Hartmann S, Kohn B. Chronic Diarrhea in Dogs - Retrospective Study in 136 Cases. J Vet Intern Med. 2017 Jul;31(4):1043-1055. doi: 10.1111/jvim.14739. PMID: 28703447; PMCID: PMC5508351.

Kawano K., Shimakura H., Nagata N., Masashi Y., Suto A., Suto Y., Uto S., Ueno H., Hasegawa T., Ushigusa T., 日本における慢性腸症犬における食物反応性腸炎の有病率J.獣医医学科学2016;78:1377–1380. doi: 10.1292/jvms.15-0457.

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