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全身に悪影響⁉︎ じつは“お口の病気”で終わらない歯周病

全身に悪影響⁉︎ じつは“お口の病気”で終わらない歯周病

3歳以上の犬猫の約8割が抱えていると言われている歯周病。


歯周病罹患率

「歯石がついてるだけでしょ?」「口が臭いだけだから様子見で…」



そう思われがちですが、実は歯周病って “全身の病気を悪化させる”ことがある重大な疾患 です。


犬も猫も、口の中は細菌だらけ。


歯石と歯周病
歯石と歯周病

歯周病が進むと、この細菌が体の中に入り込んだり、いろんな臓器にトラブルを起こす可能性が出てきます。


今回は、どのように全身に悪影響が出るのか、歯周病の悪影響について説明していきましょう。




① 口の細菌が血液に入り込む(菌血症)


プラークが原因で、歯肉の炎症である歯肉炎や歯を支える骨などまで影響が波及した歯周炎が起こると、口腔内のバリア機能の破綻や日常的な出血により、その小さな傷口から細菌が血液に入る ことがあります。


これを「一過性菌血症」と言って、


アメリカの研究でも人為的な出血が認められる“歯科処置中の犬猫の血液から実際に細菌が検出された” という報告があります。


血液に乗った細菌は…

  • 心臓

  • 腎臓

  • 肝臓

こういった臓器に到達して、感染を起こしたり、免疫反応を引き起こしたりすることがあると言われており、特に 心臓病や慢性腎臓病の子は悪化しやすい という報告もあります。


心臓病リスク
心臓病リスク


② 歯周病の炎症が全身に広がる(サイトカイン)


歯周病を放置しておくということは、口の中でずっと炎症が続いている状態のままということです。


その炎症に対応するため、体は免疫反応を引き起こしてサイトカイン( IL-1、IL-6、TNF-α)と言われる炎症蛋白が血流に乗って全身をまわる ようになります。


すると…

  • 腎臓 → 腎臓への血流低下や炎症の波及により腎臓を障害、慢性腎臓病の進行が早くなる

  • 心臓 → 心筋や心血管の障害や心機能の低下を起こして、心臓病を悪化させる

  • 肝臓 → 急性相タンパク(CRPやSAA)が上昇し続ける、肝障害や肝機能低下を起こす

人ではすでに Nature のレビューなどで“歯周病は全身の炎症を悪化させる” と広く知られていて、


犬猫でも同じメカニズムが当てはまると考えられています。





③ 歯周病の毒素や酸化ストレスが臓器を疲れさせる


歯周病の細菌が作るバイオフィルムには、LPS という毒素や、タンパク質を壊す酵素、揮発性硫黄化合物(VSC) などが含まれている。


これが血流に入ると…

  • 肝臓 → 解毒作業が増えて疲弊しやすかったり、肝細胞を障害したりする

  • 腎臓 → 酸化ストレスが増えてダメージになりやすいため、慢性腎臓病を悪化させる

猫では、歯周病がある子の方が腎臓や肝臓の血液検査値が悪化しやすい という研究もあります。





まとめ:歯周病は“口の中だけの問題”ではない


いかがでしたか?


歯周病は


①細菌が血液に入る


②炎症が全身に広がる


③毒素が臓器に悪影響を与える


という3つのルートで、体全体に負担をかける怖い病気です。


特に…

  • 心臓病

  • 腎臓病

  • 高齢の子

こういう子たちは、口のケアが全身管理の一部になるとも言えます。


「口が臭い」=ただの口の問題じゃありません。


早めの歯科検診やスケーリング、毎日のホームケアが、


実はその子の寿命を左右する大事なポイントです。


スケーリングして綺麗な歯
スケーリングして綺麗な歯

犬猫の歯科処置は麻酔をかける必要があり、人と違ってご費用も結構かかります。


しかし、日頃から人のように徹底的な歯磨きが難しい子達だからこそ


悪くなって手遅れになる前に、検討してあげましょう。



アリアスペットクリニック湘南平塚

獣医師 副院長

岩上 慎哉


歯周病について



参考文献


·  Sun, W., et al. (2023). Association of periodontal disease with chronic kidney disease in dogs: A retrospective cohort analysis. Journal of Veterinary Internal Medicine, 37(3), 1234–1241.


·  Barboza, M., Zhou, B., & Mendes, J.R. (2022). Bacterial translocation from oral cavity to systemic circulation in cats with advanced periodontitis. Veterinary Microbiology, 271, 109–118.


·  Pinheiro, L. G., et al. (2021). Periodontal pathogens as risk factors for canine chronic valvular heart disease. Journal of Small Animal Practice, 62(7), 453–460.


·  Martínez-Martínez, G., et al. (2020). Hepatic fibrosis and chronic inflammation linked to periodontal disease in domestic cats. Research in Veterinary Science, 132, 1–7.


·  Kuboniwa, M., et al. (2020). Porphyromonas gingivalis as a key pathogen in systemic diseases: Relevance for veterinary medicine. Veterinary Research, 51, 1–14.

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