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避妊・去勢手術後に、抗生剤は本当に必要!?

避妊・去勢手術後に、抗生剤は本当に必要!?

― 若い犬・猫の手術と「抗生剤」の正しい考え方 ―


避妊・去勢手術を受けたあと、
「抗生剤は飲まなくて大丈夫ですか?」
「お薬が出ないと、感染が心配です」
と感じる飼い主さんはとても多いです。



結論からお伝えすると、

健康な若い犬や猫の避妊・去勢手術では、術後に抗生剤を飲まなくても問題ないことがほとんどです。


当院でも現在は避妊・去勢手術後に処方することは基本的にはありません。


アリアスペットクリニックでの手術の様子
手術の様子


なぜ抗生剤を出さないことがあるの?


避妊・去勢手術は、獣医療では「清潔手術(Clean Surgery)」と呼ばれる手術に分類されます。


清潔手術とは?


・感染している場所を切らない


・消化管(腸)を開かない


・無菌状態で行われる


この条件がそろうと、もともとの感染リスクはとても低いことが、国内外の多くの研究で分かっています。

アリアスペットクリニックでの手術の様子
手術の様子

実際、きちんとした手術手順が守られていれば、抗生剤を使っても使わなくても、術後の感染率はほとんど変わらない
という結果が繰り返し論文で報告されています。




「念のため抗生剤」は、有効どころか逆効果の報告が多数



抗生剤はとても大切なお薬ですが、必要のない場面で使うとデメリットが多数あります。


不要な抗生剤のリスク


・下痢や食欲不振などの副作用


・体に必要な腸内細菌を死滅させる影響


・将来、効きにくい菌(耐性菌)が増える可能性


そのため近年の獣医療では、「感染が疑われないのに抗生剤を出す」ことは控える流れになっています。



手術後の感染予防で一番大切なことは感染予防での「抗生剤」ではありません。


最も大切なのは手術前や手術中の基本を忠実に守ること。


・手術室の清潔管理


・器具や手袋の無菌操作


・手術時間を必要以上に長くしないこと



これらを徹底することで、抗生剤に頼らなくても安全な手術が可能になります。

アリアスペットクリニック湘南平塚の清潔な手術室
清潔な手術室

では、抗生剤が必要になるのはどんな時?


もちろん、すべての手術で不要というわけではありません。


例えば、


・手術中に想定外の汚染が起きた


・体調不良や持病がある、既に感染状況が確認されている


・感染リスクが高い特殊な手術(腸切開等)


こうした場合には、獣医師の判断で抗生剤を使うことがあります。


つまり、 「必要な子には使う」「必要ない子には使わない」
これが今のスタンダードです。




飼い主さんにお願いしたいこと


抗生剤が出ていなくても、次の点を守ることがとても大切です。


・傷口を舐めさせない(エリザベスカラーや保護ウェアの使用)


・傷を清潔に保つ


・赤み・腫れ・分泌物がないか観察する


・気になることがあれば早めに病院へ連絡する


これらが、術後感染を防ぐ一番の近道です。




まとめ


  • 健康な若い犬・猫の避妊・去勢手術では、術後の抗生剤は基本的に必要ありません


  • 予防的な抗菌剤の投与への有効性には医学的根拠がないのが現状


  • 感染予防の主役は「清潔な手術」と「術後ケア」


抗生剤を使わないのは手を抜いているのではなく、医学的に正しい判断ということをご理解下さい。



アリアスペットクリニックグループ

獣医師

外科部長 岩屋




参考文献



原著論文・研究


1.Vasseur PB, et al.


“Surgical wound infection rates in dogs and cats.”
Journal of the American Veterinary Medical Association (JAVMA), 1985


2.Turkki P, et al.


“Incidence of surgical site infections and risk factors in small animal surgery.”
International Journal of Applied Research in Veterinary Medicine, 2021


3.Nicholson M, et al.
“Antimicrobial prophylaxis in clean small animal surgery.”
Veterinary Surgery, 2019



国際ガイドライン・コンセンサス


  1. WSAVA (World Small Animal Veterinary Association)

“WSAVA guidelines for antimicrobial use in companion animals.”


2.ASV (Association of Shelter Veterinarians)


“Guidelines for spay-neuter programs.” 2016


3.AVMA (American Veterinary Medical Association)


Antimicrobial stewardship principles


4.NICE (UK National Institute for Health and Care Excellence)


“Surgical site infection: prevention and treatment”


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