top of page

多飲多尿は様子見していいの?

こんにちわ、獣医師の堀です。


「最近、水をよく飲む気がするのですが大丈夫でしょうか。」

このような相談は、犬や猫の診療において非常によく見られます。暑さや年齢の影響だろうと様子を見ているうちに、受診のタイミングを迷われる飼い主さんも少なくありません。しかし、「水をよく飲む」という変化が正常なのか異常なのかは、感覚だけで判断することが難しい症状のひとつです。


獣医学的には、飲水量が増えることを「多飲」、尿量が増えることを「多尿」と呼びます。多くの場合、この二つは同時に起こるため、「多飲多尿」とまとめて表現されます。重要なのは、多飲多尿は病名ではなく症状であり、体内で変化が起きている可能性を示すサインだという点です。


多飲かどうかを評価する際には、体重あたりの1日飲水量を目安にします。


一般的に、犬猫の飲水量は体重1kgあたり40~50mL/日程度が生理的範囲とされ、100mL/kg/日以上の状態が持続する場合には多飲となっている可能性が高いと考えられます。


また、尿量に関しても目安があります。犬猫において体重1kgあたり20-40ml/日程度が生理的範囲とされており。50mlkg/日以上の排泄が持続する場合には多尿となっている可能性が高いと考えられます。ただし、これらの数値はあくまで目安であり、飲水量はドライフード中心の食事、気温の上昇、運動量の増加などによって一時的に増えることもあり、尿量においても水分含有量の多いウェットフードの摂取により増加することもあります。


ここで大切なのは、「一時的に多く飲んだかどうか」ではなく、その状態が続いているかどうかです。環境や生活習慣に大きな変化がないにもかかわらず、多飲多尿が続く場合には、動物病院への受診が必要になることがあります。また、体重減少や元気の低下、食欲の変化を伴う場合には、より早期の受診を推奨します。


<原因>


多飲多尿を引き起こす原因として、まず挙げられるのがホルモン疾患です。中高齢の犬に多いクッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)糖尿病では、ホルモンバランスの異常によって強い喉の渇きが生じ、水を大量に飲むようになります。これらの疾患では、多飲多尿に加えて、食欲の変化、体重の増減、被毛の質の低下や脱毛といった症状を伴うこともあります。

クッシング症候群
クッシング症候群

一方、高齢の猫でよくみられる疾患としては甲状腺機能亢進症があり、代謝の亢進により飲水量や尿量が増加することがあります。また、水の再吸収を調整する抗利尿ホルモンの働きの異常が生じることで起こる尿崩症も、多飲多尿の原因のひとつです。

甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症

次に重要なのが、泌尿器疾患です。慢性腎臓病や腎盂腎炎などでは、腎臓で尿を濃くする機能が低下し、必要以上に水分が尿として排出されてしまうため、多飲多尿が認められます。特に慢性腎臓病は初期には目立った症状が出にくく、「水をよく飲むようになった」という変化が最初のサインとなることも少なくありません。また、肝機能不全においても、多飲がみられる場合があります。


さらに、避妊手術を受けていない雌犬猫では、子宮蓄膿症が多飲多尿の原因となることがあります。この疾患は全身状態の悪化を伴うことが多く、早期の診断と治療必要な緊急疾患です。

子宮蓄膿症
子宮蓄膿症

そのほか、内服薬の影響によって多飲多尿が起こる場合もあり、特にステロイド剤や利尿剤の使用では、尿量が増加し、その結果として飲水量が増えることがあります。



このように、多飲多尿の原因は非常に多岐にわたります。そのため、多飲多尿という症状だけで原因を特定することはできず、血液検査や尿検査を基本とし、必要に応じて画像検査を組み合わせながら、総合的に評価していきます。


血液検査:腎機能、肝機能、血糖値、ホルモンの測定などを行います。

尿検査:尿比重の確認と尿糖の有無を確認します。

画像検査(レントゲン検査、腹部エコー検査):腎臓、肝臓、子宮を含めて臓器の形態を確認します。


これらの検査によって、体の状態を客観的に把握し、原因の特定を行なっていきます。



<お家でできること>


・ペットボトルを用意してそこからお水を与えることで1日の飲水量を測定する。

→可能であれば記録する。

・体重を確認して、著しい減少がないか確認する。

・食事やおやつで塩分の多く含むものは避ける。

・多飲多尿の疑いがあるときに、お家で水の制限はしないようにしましょう。

→脱水や状態悪化の原因になることがあります。


受診を検討していただければと思います。


『飲水量が増える』、『おしっこの量が増える』などは比較的お家で見かけやすい変化だと思います。飼い主さんが日常の変化に気づいていただくことで検査に進むこともできます。明らかに飲水量や尿量が多いなどあればご気軽に相談いただければと思います。





参考文献

  1. Nichols R. Polyuria and polydipsia: diagnostic approach and problems associated with patient evaluation. Vet Clin North Am Small Anim Pract 2001; 31: 833–844.

  2. Kim J, Yoon S, Kim M, Lee S, Song W, Yun Y. Primary polydipsia in a cat. JFMS Open Rep. 2025 Mar 23;11(1):20551169241311680. doi: 10.1177/20551169241311680. PMID: 40143954; PMCID: PMC11938496

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page