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関節炎と上手につきあうために


関節炎とは


「関節炎」とは、関節の中で炎症が起きている状態を指します。変形性関節症、免疫介在性多発性関節炎、感染性関節炎などを含む総称ですが、私たちが一般的に「関節炎」と呼ぶ場合、その多くは「変形性関節症」を指しています。


変形性関節症は、関節の軟骨がすり減ることで、骨そのものや周囲の組織に慢性的な炎症が起こる病気です。


原因としては、加齢、肥満による関節への負担、関節の形成不全、外傷、過度な運動などが挙げられますが、犬と猫では少し特徴が異なります。


犬では骨格の形成不全に伴って発症することも多く、特に大型犬の股関節形成不全や肘関節異形成症では、若い頃から関節炎が進行する場合があります。一方、猫では骨格に明らかな異常がなくても、早いと6歳頃から関節炎が起こり始めるという報告があります。また、年齢とともに有病率は増加していきます。



関節炎の進行


関節炎の進行
関節炎の進行

さまざまな原因によって骨の表面にある軟骨が摩耗・損傷すると、関節内の滑膜が炎症を起こし、炎症性サイトカイン(炎症を伝える物質)が増加します。これにより、さらに軟骨の破壊が進むという悪循環が生じます。このため、関節炎は一度発症すると自然に治ることはなく、徐々に進行していきます。



関節液の粘り気が低下すると、関節の潤滑性や衝撃を吸収する力が弱まり、軟骨の摩耗がさらに進みます。軟骨が減少することで関節は不安定になり、体の補正反応として骨棘(こつきょく)と呼ばれる骨の変形が起こったり、関節内の骨が硬くなったりします。その結果、痛みが強くなり、関節の動く範囲が狭くなっていきます。


こうした変化により、関節が動かしにくくなったり、痛みが生じたりすることで、活動量の低下、歩き方の変化、関節のこわばり、筋肉のやせ、さらには痛みによる性格の変化などがみられることがあります。



診断


変形性関節症の診断では、視診や触診がとても重要な役割を果たします。しかし、病院での緊張や恐怖心によって痛みを感じにくくなり、診察室では一見問題なく動けてしまう子もいます。反対に、緊張でかたまってしまったり、痛みから攻撃行動が見られたり、動きの観察や触診自体が難しい場合もあります。特に猫では、その傾向が強くみられます。

触診
触診

また、レントゲン検査も変形性関節症の診断で一般的に行われます。犬では、病変部位の特定だけでなく、関節の形の評価にも有用です。若い犬では将来的な変形性関節症のリスク評価を行い、高齢の犬では併発している病気の確認にも役立ちます。

一方で、猫ではレントゲン検査による評価には限界があります。明らかな痛みを伴う関節のうち、67%ではレントゲン画像上に変形性関節症の所見が見られなかったという報告があります。また別の報告では、レントゲン画像上で変形性関節症が確認された関節のうち、実際に痛みを伴っていたのは36%であったとされています。


これは、はっきりとした症状を示さない子が多いことや、診察中の緊張状態では痛みを感じにくくなることが理由の一つと考えられています。一方で日常生活では、活動量や運動能力、グルーミングの様子、排泄習慣などに変化が見られることがあります。


そのため、日常生活の中での動きや行動の変化に気づくことが、関節炎に伴う痛みを早期に発見するための大切な手がかりになります。気になる動きがある場合には、ご自宅で動画を撮影して見せていただくと、診断の参考になります。


その他、関節液の検査や、超音波検査、血液検査などを行い、他の病気の否定をする場合もあります。



関節炎のケア


【体重管理】


体重管理は、関節炎の予防や進行を遅らせるために非常に重要です。肥満は関節への負担を大きくし、炎症を起こしやすくします。6〜9%の体重減少でも、鎮痛剤の使用量や使用頻度を減らすことができたという報告があり、実際に体重を減らしただけで症状が改善する子もいます。


シニア期のダイエットでは、特に栄養バランスへの配慮が必要です。療法食は、必要な栄養を保ちながらカロリー制限ができ、食事量を極端に減らさずに体重管理ができる点がメリットです。また、関節の健康をサポートする成分が含まれているものもあり、関節機能の維持・改善に役立つと考えられています。

ダイエットが必要です。。
ダイエットが必要です。。


【サプリメント】


特に犬では、オメガ3脂肪酸、緑イ貝、グルコサミンなどの成分が、変形性関節症の管理に有益であることが示されています。これらのサプリメントは、関節の炎症を抑え、病気の進行を遅らせる可能性があるほか、痛みの緩和にも効果が期待されています。



【理学療法】


犬の変形性関節症に対する理学療法には、陸上や水中での運動療法、マッサージやストレッチなどの徒手療法、水治療法、温熱療法、レーザー、電気、磁気、超音波など、さまざまな方法があります。当院では、陸上での運動療法や徒手療法に加え、レーザー療法を実施しています。


レーザー療法は、特にシニア犬において、痛みの軽減や運動量の増加が認められたという報告があります。処置中に痛みや刺激はなく、触られることが極端に苦手でなければ、猫でも実施が可能です。いずれの理学療法も、継続して行うことで、痛みの緩和や機能回復の効果が高まります。

レーザー療法
レーザー療法


【薬物療法】


治療の中心となるのは鎮痛剤です。関節炎の痛みは複数の要因が重なって生じるため、痛みが強い場合には、作用の異なる複数の鎮痛薬を組み合わせて使用する「マルチモーダル鎮痛」が推奨されます。しかし、特に猫では長期使用の安全性が確立されている薬が少なく、副作用を抑えながら痛みを管理することが大きな課題でした。


近年、抗NGF抗体製剤が犬・猫ともに変形性関節症に対して認可され、長期的な痛みのケアに新たな選択肢が加わりました。


また、鎮痛を目的とする薬だけでなく、関節の状態を安定させ、病気の進行を遅らせる可能性が示唆されている構造修飾変形性関節症薬(SMOAD)も治療に用いられます。



まとめ


関節炎は、関節に炎症が起こり、少しずつ進行していく病気です。年齢とともに増えていきますが、痛みや違和感は外から分かりにくく、日常の小さな変化が大切なサインになります。

関節炎は完治する病気ではありませんが、体重管理や日常のケア、適切な治療を行うことで、痛みを和らげ、生活の質を保つことができます。ご家族が日々の生活の中で気づく小さな変化と、病院での診察や治療を合わせながら、それぞれに合ったケアを続けていくことで、その子らしい毎日を支えるお手伝いをできたら嬉しく思います。



アリアスペットクリニック

獣医師 菊地



参考文献

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